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「それと、ありがとう」
「…何が」
「怪我の手当てもだけど、ここに運んでくれて色々お世話になったみたいだから」
「…だから礼を言うに足ると?」
「うん」
笑ってみせると八代君は何かを言い掛けて、代わりに深い溜め息を零した。
「…もう良い。お主がどうしようもない阿呆である事は十二分に分かった」
「阿呆認定は変わらないんだ…」
「…阿呆であろう。お主、分かっておるのか」
「何を?」
「…ワシはお主を利用したのじゃぞ」
―――どう? 囮にされてたって知った気分は
九重の声が思い出される。
俺を見る八代君の瞳がアメジストのように輝いている。その瞳の奥で一体何を思っているのか俺には全く分からないけれど
「それなら尚更(なおさら)、助けてくれてありがとうだよ」
「……」
「俺の勝手な想像だけど、俺を囮にしてでもアイツ…えーっと九重を捕まえたかったんでしょ? 確かに怖い思いはしたけど、こうして生きてるし。それに言ったでしょ? 俺が勝手に信じてただけで、八代君が気にする必要は無いって」
「…もし」
「え?」
「もし、ワシがお主を見殺しにしていたらどうするつもりじゃった」
「んー…、その時はその時かな? ちょっとした賭けだったんだ。初めて会った時、九重の殺生に反対的な事言ってたから。…あ!でも『もし』って事は殺させる気はなかったって事?」
ベラベラと喋り倒してからパッと顔を上げると
「……………」
そこには呆気に取られているような表情があった。
そして、しばらく無言が続いた後
「…ここまで肯定的な人間も稀じゃな」
八代君の眉間がふっと緩められた気がした。
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