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【第三章】宿縁と奇縁1
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「少し遠出するぞ」
それは、俺が事実上の無職と判明してから8度目の朝を迎えた日だった。
お金云々(うんぬん)の問題は、八代君が持っていたこの世の端末と似たような機械(あの世で支給されるらしい)に表示されていた桁数がヤバい額を見せられて、割と早い段階で解決した(いや、させられた)。
八代君いわく「だてに長生きしてない」らしい。そんなこんなで有無を言わさず、俺は八代君に大人しく面倒を見られる事となったのだった。
そんな、ある日だったんだ。
「出かけるって事? どこに?」
「関西じゃ」
「関西?」
少し遠出って距離じゃないような…
「関西に何しに行くの?」
「ワシの創造神が祀られておる社(やしろ)がある。お主の件で呼び出されたのじゃ」
「へー…大変だね」
「? 何を他人事のようにしておる。お主も行くのじゃぞ」
「……………え!?」
俺も!?
「百聞は一見に如かず、との事じゃ。ワシが報告するよりも直接見(まみ)えた方が早い」
「それは…そうかもしれないけど」
だって、それって…
八代君の生みの親という事は、それはつまり当たり前だけど神様だという事。
あの八代君ですら匙を投げたというのに、更に神様にまで見捨てられてしまったらと思うと、もう不安しかない。
「…何を考えておるのか知らんが、お主にとってそう悪い話ではない」
「へ?」
「もし、問題が解決できんかったとしても、神の恩恵が受けられればお主が今生を全うするくらいまでは、これまでのように暮らせるじゃろう。いや、もしかしたらこれまでよりも更に向上するかもしれん」
「え、そうなの?」
「ああ。それくらいの事、神にとっては容易い事じゃ。死んだ後の事を今からうじうじ悩まれても鬱陶しくて敵わん。お主の長所は前向きな阿呆さ加減じゃろうが」
これは、もしかして…励ましてくれてる、のかな?
口調は悪いけれど、その不器用な優しさにふっと肩の力が抜けていく。
「そうだね。俺が悩んだってどうにもならないんだし、神様に会えるのも楽しみにしとくよ」
「神に会えるのがそんなに楽しみか」
「うん。だって八代君の生みの親って事でしょ?そりゃ、どんな人…いや神様か気になるよ」
「…………」
「八代君?」
「な、何じゃ」
「いや…何かぼうっとしてたから、どうかしたのかなって」
「…何でもないわ。物好きな人間めと感心しておっただけじゃ」
「え、そうかな?」
照れるなぁ。
「誰も褒めておらんわ」
と、八代君から冷たーい視線を頂戴したところで、疑問を口にする。
「いつ行くの?」
「明日じゃ」
「明日!?きゅ、急すぎない?」
「善は急げというじゃろう」
「そ、それはそうかもしれないけど…あ、じゃあ大家さんに暫く留守にするって言っておかないと」
「それは必要ない。もう各方面へと手配は済ませてある」
「い、いつの間に…」
「準備するものも特にはない。お主は着の身着のままで着いてこれば良いという事じゃ」
事もなげに言い放った八代君の言葉の数々に思わずポカーンとしてしまう。
「おい、返事はどうした」
「あ、はい。分かりました…」
こうして、八代君との小さな旅が決定したのだった。
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