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冬、訪れた変貌 プロローグ
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純はふと、目が覚めた。
何か夢を見ていた気がするが、何の夢だったかははっきりと、覚えていない。
ザワザワと胸に不快感が、宿っている。
隣で寝ている太一を、起こさないように抱き締めた。
あれからずっと、時間が許すかぎり、太一と一緒にいるようになった。
ただ、隣で寝ているだけで良い。それだけで、安心できたから。
まだ明けきらない夜。地平線が見えたなら、少しは太陽の光が見えただろうか。
秋人は、こんな不安な時を今どうやって、過ごしているのだろう。
安心できる温もりなど、彼にはきっと今は無い。
ザワつく胸の不快感は、秋人のことを考えたら、その分大きくなった。
あぁ、そうだ。
純は思い出した。
初めて、秋人と会った頃の夢を、見ていた。
彼は、親元から離れて、施設にいたのだ。
自分は、親元でなんとなくの毎日を過ごしていた。
太一に出逢って、己の不確かだった力を知って。正が親と話しをして、純はここに来た。
今でも、親との連絡は有る。普通に、大丈夫か、不便はないか、と心配もされる。
秋人と章には、それが、無い。
秋人も章も、親元から離されて、幼い時から施設にいたのだ。
力のことを、話し合えるのも、二人でいた時だけだっただろう。
だから、互いに寄り添い合っていた。
だから、互いが必要だと、依存し合っていた。
親の愛を、あの二人は知らない。
施設に入った経緯は知らないけれど。それでも、小さな二人が、ずっと一緒に施設にいたことは、知っていた。
初めて出逢ったころ、誰も信頼しようとしなかった、秋人。
章の方が、社交的だと思ったが。
今回のことで、実は章の方が、誰も信頼していないのではなかったのかと、思い知らされた。
秋人がいたから、皆を信頼しているように、見えていただけ。
秋人の分まで、明るく見せていただけだ。
「ん、純?」
ハッとした。太一が起きたのに気付かないほど、考え込んでいた。
「ごめん。起こした?」
静かに太一に問いかける。「いや」と太一は頭を振った。
「まだ、早い」
そう言って、また純に抱き着く形で、眠りにつこうとする。
たしかに、まだ早いのだ。太陽の光は、まだ届いてもいない。
「うん。もう少し、眠れるね」
純はそう返して、太一が眠るのを、静かに見ていた。
こうやって、温もりがすぐ近くにあって。何も警戒せずに隣で眠る太一。
その姿を見れるだけで、純の心のザワつきは、少しだけ和らいだ。
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