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終幕 新しい門出
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「君が、村越勇君だね。中条立名です。よろしく」
穏やかに笑う青年に、正とはまた違う優しさを、勇は感じた。
「はい。よろしくお願いします」
勇が答えるのに、ふふふ、と静かに笑った。
「肩っ苦しいのは、あんまり好きじゃないから。話しやすい話し方で良いよ」
そう言う彼は、ついさっきまで、アメリカに留学していたらしい。
秋人は回復して、今はまた泉林に通っている。正が留学と手を打っていたので、単位の問題はなく、三年に進級できるらしい。
今は、事務所に皆集まっていた。
聖と純が最後に帰って来たので、純はまだ制服のままだ。
「今までアメリカにいた僕が、ここの責任者になるっていうのも、変な感じなんですけどね。聖さんの仕事の関係上、僕が適任となったので。でもきっと僕が一番慣れてないから。亜希羅姉さんは、自由な人なので仕方ないのかなとも、思うんですけどね」
困ったな、と言っているが、さほど困っているようには見えない彼。
穏やかに、微笑を湛えたまま、静かに事務所内を見渡した。
「正兄さんが、今どこにいるかとか、僕も知りません。ただ、兄さんがいつ帰って来ても良いように、皆で待ちましょうか」
皆が思うことは、一つだけ。
正が帰って来るのを、皆で待つ。それだけだ。
「そうそう。僕のアメリカでの友人が、明日には着く予定なので。彼らも加えて、新しく歩んでいきましょうか」
ゆっくりで良いんです。何もいきなり、大きく変わる必要はない。
だから、今まで通り。
ただ変わったのは、事務所の責任者が、立名になって、新しい仲間が二人増えるだけ。
そう立名は言う。
間違っていないし、それは変えようのないことだから、誰もが納得して頷いた。
「今までのことは、聖さんや正兄さんに聞いてます。だから、……そうですね。それぞれの中に、変わりたいという思いがあるのかもしれません。皆で、支え合える仲間。大切にしていきましょう」
それぞれの気持ちは、大切にする。
でも、仲間がいることを、忘れてはいけない。
一人で、思い悩むな。皆がいて、相談し合って、支え合って行けば良い。
※
「初めまして、アイリザークと言います。ザークと呼んでくださいね。よろしくお願いします」
「リグアザード・ラミュエール。リグで良い。よろしく」
立名が連れてきた、アメリカの友人というのは、変わった友人だった。
秀は二人を見て、少し驚いた顔をする。
「あーっと、中条秀です。立名の弟です。よろしく」
びっくりして、自己紹介が遅れたが、ザークはにっこり笑った。
笑顔や雰囲気が、立名に似ていると、秀は思った。
ザークがファミリーネームを言わなかったのには、何か理由があるのだろう。そこまで突っ込んで聞けるような、人間関係はできていないので、秀は何も聞かないことにした。
そもそも彼ら相手に、人間関係で良いのかも謎なのだが。
ザークがぐるりと、秀の周りを見渡す。
多分、見えてはいないようだけれど、何かしら感じているのだろう。
秀が力を一時解放した時から、式神や式が、秀の周りを守るように付いている。そこまで心配するほどの、ことではないのだけれど。彼らは力を解放した秀が、大変だったのを見ているから、心配して自分に付いて回っているのを知っているので、秀は好きにさせていた。
だが、彼ら新しい仲間には、不思議な存在なのだろう。
「俺の式神や、式がいるだけですよ」
そう言って、彼らに通じるのかわからなかったが。ザークが頷いたので、秀は通じたと思うことにした。
「じゃあ僕は、ザークたちを部屋に案内して来ます。ごめんね、秀君。休みを事務所で過ごさせちゃって」
立名の笑顔と、ザークの笑顔を見比べて、やっぱり似てるな、と思いながら。
「平気だから。それより、立兄とザークさんって似てるな」
思ったことを、素直に口にしていた秀だった。
ちょっとびっくりしたような、立名とザークが顔を見合わせていたけれど。
リグは二人を見比べていた。が、少し納得はできなかったようで、首を傾げていた。
「表面上の、取り繕い方だけじゃねぇのか」
ポツリと言ったリグの声は、秀には聞こえたけれど。
それに秀は自然と笑っていた。あぁ、取り繕うのは、たしかに立名は得意かもしれない。
上階の居住スペースに向かった立名たちを見送って、秀は事務所で書類整理を再開した。
おもしろい、仲間ができたな。と笑いを押さえる顔をしながら。
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今までお付き合いくださり、ありがとうございました。
やっと、ピリオドが打てました。
いろいろと、あるんですが。描写足りなくて何人か空気状態だったとか……いろいろと。
話しを膨らませようと思えば、多分いくらでも出て来ただろうけれど。
どこかポロポロと落としまくってると、たしかに思ってるのですが。
書き続ければ、書いてる時は、ここの描写が必要で、ってとこしか見えなくなるもので。
後から、しまったなぁ、とか思う部分もある……んですけど。
突っ走りはじめたら、終着点まで突っ走ってしまうもので。
良い訳にしか、なりませんので、この辺で止めておきます。反省会は。
約一カ月半くらいの連載期間でした。
今後、『中条秀くんの日常』や、新連載など、まだ彼らが出てくる可能性はありますので、もしよろしければ、そちらもお読みいただけたら嬉しいです。
最後に出て来た新しい仲間二人は、『FULLMOON』からの二人です。
ではでは、本当にお付き合い、ありがとうございました!
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