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アジスタとグライシズ 上機嫌なアイツ
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最近、アジスタの機嫌が良い。
長年観察して、やっと気付けるレベルになった。本当、すっごい観察した。
だから、アジスタが弟たちのこと可愛がってるのも知ってるし、可愛いモノが好きだってのも知ってる。
あの、無口で無表情で、何にも関心がありません、みたいなアジスタの心の中は、意外なことで喜んでたりしているらしい。
弟たちは、未だにアジスタに対して、誤解したままだけど。無口だし、無表情過ぎるんだよ。なのに、アジスタは弟たちに恐がられてるって、気付きもしないの。おっかしいよね。本人は可愛がってるつもりらしいけど。弟たちには恐れられてるっていう。なんとも面白いことになってる。
で、アジスタが機嫌が良い理由、思い付かない。
この前覗いたら、弟たちとは相変わらずだったし。
外で、何か良いことでも有ったのか?
僕は別にアジスタの後、追いかけ回してるわけでもないから、外で何してるとかまでは知らない。
本当は、追いかけ回したいくらい好きだけど。
アジスタたちの家にだって、用もないのに入り浸ってるから、これ以上はな、と思って止めたんだけど。
アジスタのやること全てを見ていたいくらいには、好きなんだよ。僕には興味無さそうな視線しかくれないけどさ。
そこだけは、未だにわからない。アジスタが僕のことどう思ってるのか、ってとこが。
どうしても、僕の良いように解釈していまいそうになるから、なんだけど。
僕が家に入り浸ってても、「また来てるのか」程度で終わるから。まぁ、嫌われてはいない。とだけ思っておくことにしてる。
ううーん。アジスタの機嫌が良い理由、知りたくなるね。
アジスタ本人に、聞きに行っても良いんだけど。アイツがペラペラ機嫌が良い理由を、しゃべるとは思えない。
機嫌が良く見えるのに、不思議な顔をして終わりそうだ。自分が機嫌が良いって、気付いてない可能性があるからね。
「あれ、アジスタ出かけるの?」
全身黒づくめに、長く艶やかな赤い髪が映える。絶対目立つ格好なのに、アジスタは毎回気にせずこの格好だ。
「あぁ」
僕が聞いたのに短く返事して。この際僕がアジスタの家にいるとかどうとかは、気にされてない。
どこかウキウキしたように見えるアジスタを、僕は見送ってから、後付けるか。と考えた。
「アイリス」
珍しいことに、アジスタ自身が誰かに声をかけている。
珍しいこと過ぎて、僕はちょっと眩暈がした。
何、あの子。
人間の、まだ幼い女の子。
アジスタが好きそうな、可愛らしい容姿をしてるのは、わかるんだけど。
会話は気になるけど、聞かない。
アジスタの方から声をかけてた事実が、僕を苛んでいるから。
これ以上のこと、聞いてたら、本当に僕はおかしくなりそう。
だけど、アジスタの機嫌が良い理由はわかった。あの子が気に入っているんだ。
人間の、力の弱い子どもなのに。簡単にアジスタのお気に入りになっている、あの女の子。
ギリッと奥歯を噛みしめた。
人間になんて、興味を抱かないだろうからと、油断してた。
わざわざ昼間に出かけて、あの子といることを選んでるアジスタ。
僕が家にいようが、何してようが、全く関心を示さないのに。あの子には、関心を示すんだね。
「殺してしまいたい」
きっと、彼女が死んでも、アジスタは気にしないだろう。
あぁ、いなくなったのか。と思うくらいだ。
お気に入り相手でも、そんなもんだ。ってわかってる。
でもやっぱり、アジスタの楽しみを奪うのは、良くないよね。
僕の思いだけで、勝手に彼女を殺すのは、良くない。
せっかく機嫌良くて、楽しそうなんだから。僕がそれを壊しては、いけない。
僕が彼女を殺したってわかっても、アジスタは何も言わないだろうけど。それでも、自分のお気に入りを他人が殺したら、良い気はしないだろう。
僕は、アジスタには嫌われたくないから。
だから、こうやって見てるだけしかできない。
家にいても、外にいても、アジスタを見てるだけ。滑稽すぎて、笑いが込み上げる。
いつかアジスタから、声をかけてくれることを、望んでいた。
さっきあの子に声をかけたみたいに、「グライシズ」って名前呼ばれたい。
願ってても、叶わないかな。
僕に興味を示さないアジスタ。
僕はね、君の興味を引いた女の子を殺したくなるくらいに、君のことが好きなんだよ。
思ってるだけじゃ、意味はないけど。わかってるけど。
アジスタを独占できないことくらい、あの弟たちへの可愛がり方見てたらわかってる。
でも、人間に持っていかれるのは、計算外だ。
僕にも、興味を示してよ。
アジスタは、絶対王者だ。
僕たち一族は、己が心から愛した人にしか殺せない。
でも、アジスタは、そこを捻じ曲げて、誰でも殺せる。
僕を殺せるのは、アジスタしか居ないけど。
だって、僕が愛してるのは、そんな絶対王者のアジスタだから。
アジスタは、誰かが殺せるんだろうか。例えば、今アイツが気に入っているあの女の子とか……。
なんだか、それは、許せないなぁ。
僕って、本当に、心が狭かったんだね。
今もアジスタの視線が、あの子を映してるのが、許せない。
僕はそっと踵を返した。だって、このまま見てるだけは、辛すぎる。
「君は本当に可愛いものが好きだね」
皮肉めいた言葉が、口をついて出てた。
僕は、可愛いには程遠い。なんか、悔しいな。
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