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篝に手をひかれて辿り着いた先は、街中の路地を入った穴場的な場所にひっそりと佇んでいた。
喫茶店ルノアールと書かれた、消極的な看板があるだけのそこはきっと俺一人じゃ見付けられなかっただろう。
篝は慣れた手付きで扉を開けると、扉についていた古びた鈴がチリンチリンと可愛らしい音を鳴らせた。
「……おや、怜一くん。いらっしゃい」
店内はカウンター席があるだけの、こじんまりとした昔ながらの雰囲気で。
まだ開店したばかりなのか、客はいない。
鼻孔を擽る珈琲の芳ばしい香りがとても心地良く、初めてくる場所なのに何故か懐かしいような気持ちになった。
カウンターにいた初老の男性は、篝の姿を見るなりニッコリと感じの良い笑みを浮かべた。
「こんにちは、マスター」
「あれ?今日はお連れさんがいるんだね」
「はい。マスターの美味しい珈琲を飲ませたくて」
マスターは篝の言葉に嬉しそうな表情を浮かべた。
マスターと目があい、会釈をすると初対面の俺にも優しく微笑んでくれて何だか心が温かくなる。
カウンター席の端っこに2人で腰を下ろす。
テーブルに立てられていたメニューに視線を向けると、飲み物は珈琲とオレンジジュース。食べ物は玉子サンドとナポリタン、それからホットケーキと手書きの文字で書いてあった。
「怜一くんは、ホット珈琲とサンド?」
「はい、お願いします」
「お連れさんは何にしますか?」
優しい表情のマスターに問い掛けられて、思考を巡らせる。
珈琲は頼むとして……どれも美味しそうで迷う。
少々悩んだ後で、結局アイスコーヒーと玉子サンドとナポリタンの両方を頼んだ。
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