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父は母の言葉に一瞬時が止まったかのようにフリーズした後で、驚きに目をまん丸くさせた。
……そりゃあ驚くのも無理は無い。
『彼女』なら兎も角、俺の相手は『彼氏』だ。
俺はどういう顔をしていたらいいのか分からずにたじろぎ視線を下に落とす。
思わずギュッと膝の上で手を握り締めた。
そんな俺を見兼ねてか、隣に座っていた由貴が俺の肩をポンと優しく叩いてくれて少しだけ緊張と不安が治まった様な気がした。
「ゆ……由良に彼氏?こ、恋人?俺の由良があぁああぁ」
「パパ、落ち着いてよ。俺の由良って何なの?いい加減、子離れして下さい!」
嘆く父に、諭す母。
母は強しなんて言葉があるけれども、あながち間違えでは無いと思う。
我が家でも、例に漏れず母は強い。
母の言葉に父はどんよりとした表情を浮かべると、ハァと1つ小さな溜息をもらした。
「由良……何だその、彼氏君は良い人なのかな?由良の事大切にしてくれるのかな?」
父に問い掛けられ下に落としていた視線を上げた。
篝は良い人だ。
それに間違い無く俺を大切にしてくれると思う。
父の言葉にゆっくりと頷いた。
「そうか……由良が選んだ人ならきっと間違い無いだろうし、寂しいけど父さんは陰ながら応援するよ。日程は今週の日曜日はどうかな?父さん、その日は一日休みだから、相手方の都合が良ければ日曜日にしよう」
父は、寂しそうな表情をしながらも優しく微笑んでくれて、そう言ってくれた。
そんな父の優しさに思わず目頭が熱くなる。
きっと父も母も出来る事なら『息子』の相手は『女性』が良かっただろうし、きっと追々は孫だって見たかった筈。
だけれど、俺が同性愛者だと知りながらも責める事も無く優しく微笑んでくれる。
俺は本当に恵まれていると、そう改めて深く痛感した日だった。
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