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17(最終章)ー1
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1987年
大学を卒業した春、修平は京都・寺町の貸画廊で個展をひらいた。
鬼の絵ばかりが並ぶギャラリー。
場所がよく、人気のある画廊を借りたせいもある。まずまずの盛況ぶりだった。
展示スペースの奥に、ロールスクリーンで仕切られた応接スペースがある。
修平はそこに座ってかつてのゼミ仲間と談笑していた。
「ああ、俺下宿かわったから・・・。
前の所古くなったんで、取り壊しになったんだよ。」
「ほんで行方不明やったんや。おまえなあ、引っ越ししたらちゃんと知らせえや。」
しばらくぶりのゼミ仲間は、口調は学生時代と変わらなかったが、
長かった髪を短くして、かっちりしたスーツを窮屈そうに着ていた。
修平は友人に手を合わせた。
「ごめんごめん。・・・でも杉本には電話で言っといたんだけど。」
友人はぱたぱたっと手を顔の前でふった。
「あかんあかん。あいつなあ、マメそうで、マメちゃうねや。」
「へぇ・・・。」
「この個展のハガキもらえへんかったら、ずーっとわかれへんとこやったわ。
あ、ほんでおまえ、就職したんかいな。」
修平は苦笑した。
「ううん・・・なんかさ、気がついたら4回生終わっててさ・・・。
教職はとったから、田舎帰って口があったら美術の先生かなあ。」
「ちゃー!!呑気やなあ。この不景気に。」
「呑気じゃないよ。親はギャーギャー言ってるし。」
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