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水に濡れる感覚で目が覚めた。雨だ。裸に辛うじてシャツを一枚羽織っているだけだった。濡れたシャツが身体に張りついて気持ちが悪い。周辺を見渡すと、少なくはない人々がこっちを遠巻きに見ていた。
「い、た......」
身体の節々が痛んだが、それよりこの場をどう切り抜けるか頭を働かせる。この格好では、公然猥褻罪で捕まるだろうか。それよりもここにいては会場のオーナーに迷惑をかけてしまう。携帯もないから助けを求めることもできない。八方塞がりで一先ず這うように路地裏に隠れようとしたところで後ろから呼び止められた。
「雅くん!ほら、これを羽織って、こっちにおいで!」
ふわりとコートを掛けられて建物の中に連れていかれる。霞む視界でなんとか目を凝らすと、そこにいたのは芹沢さんだった。
「あの若い客だね。やっぱり出禁にすりゃよかった。せめてあの時止めるべきだった。守ってやれなかった......ごめん」
「せりざわ、さん......」
「もう大丈夫だよ。今東雲さんに連絡したからね」
まただ。また、色んな人に迷惑をかけて、父さんの元に返される。まるで家出を繰り返す子供みたいだ。なのに轟さんも芹沢さんも、俺を見捨てない。悪いのは俺で、俺の勝手でこうなっているだけなのに。
「いらない......何か服貸して......一人で帰れる」
「バカ言わない。酷い熱だよ。アナルの具合も悪そうだから影山先生にも連絡したよ」
「大丈夫......ごめんなさい、もう、迷惑かけないから......」
「雅くん、俺は迷惑なんて思っていない。雅くんは俺の大事なモデルなんだ。また守りきれなかった。謝るべきは俺の方だよ」
「芹沢さん......なんで、なんでそんな優しいの......」
「雅くんがいい子だからだよ。俺は雅くんの本当の姿を知ってる。また愛されることを知れば輝ける日がくる。アングラを、緊縛を心の不安の捌け口にするのは構わない。不安定な君をサポートするのが俺の仕事さ」
芹沢さんはとことんフェチに拘る変人だけど、それを仕事にしているだけあり、自分の主催するイベントや企画に出演するモデルや緊縛師たちを全力でサポートしてくれる。この人の元でなら何も心配しなくていいと皆が口を揃えて言うくらい、信用のおける人だった。個人の恋愛感情云々はなく、ただただ演者を守る彼の言葉だから、俺は素直に聞くことができた。
「でも俺、もう役立たずだよ......」
「そんなことない。この俺の目に狂いはないよ。雅くんはまた花開く。なにより......傷ついてボロボロになっても、それがまた美しさを引き立てるのだから、全く君という存在はすごい逸材だね。だからこそ色々やっかいな輩に好かれるんだろうけど」
「芹沢さん......ねぇ、久しぶりにセックスしようよ」
「えー、東雲さんに見つかるよ?」
「いい。ね、お願い......」
まだ駆け出しだった頃、何度か身体を重ねたことがある。そこには愛はなくて、でも情がないわけではなかった。大切にされているけど、特別に扱われているわけではない。それが心地よかったのを思い出す。
「あんまりしたら、後ろがますます緩くなっちゃうよ......って言おうと思ったけど、俺のチンコちっちゃいからなぁー、大丈夫か。って、それも言ってて虚しくなるな」
「あはは......ぁ、ん......」
芹沢さんの指先が身体のラインをなぞり始める。俺の気持ちが沈まないように冗談を言いながら、遊びのような戯れで、けれども確実に快感を与えてくれた。芹沢さんはキスを一つすると、そしてにっこり笑って言った。
「綺麗だよ......雅くん。一緒に気持ちよくなろうか」
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