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それからまた、別の電話番号を探しだしてかける。すぐには繋がらなくて切ろうかと思ったところで、如何わしい声が聞こえてきた。
「もしもし、ユキ?」
『みやたぁ......んっ、あっ、だい、じょうぶやった?ぁんっ』
「......掛けなおす」
『あっ、待って、せんせぇ、みやたんやから......ぁぁあんっ、そこぉ、そんなんあかん、あっあっ』
俺への当て付けなのかと思うほど、どうやら恋人とよろしくやっている真っ最中だったらしい。
「ばかユキ」
俺は一言そう言って電話を切った。他人のセックスを電話口で聞くほど変態ではないし、そんなメンタルも今は持ち合わせていない。眩暈を感じて安定剤を飲む。痛むこめかみを押さえながらしばらく横になっていると電話が鳴った。
『ごめぇん、みやたん、おまたせー』
「セックス中なら電話に出るな」
『だってみやたんからやったもん!出んと次いつ繋がるかわからへんやん!俺だって心配してたんやで?』
「......それは俺も悪かったけどね......ユキは、先生と順調みたいだね」
『えへへ、うん。だって結婚したもん。離婚だけは絶対せぇへんよ』
ユキは俺より5歳歳上で、ゲイビの受け専男優をしている。高校の頃の担任とずっとあやふやな恋人関係を続けていたようだが、数年前に養子縁組を組んで正式に籍も入れたらしい。
「相変わらずラブラブなら、AVなんか辞めればいいのに」
『それはあかん。俺だって一応男やし、養われるだけは嫌やもん。でも、俺はもうAVしかできる仕事ないから。それに、最近は役者だけじゃなくて、監督とか企画する側にもチャレンジしてるねん!』
「へぇ、そうなの」
『うん。男性用エロ下着の開発とかな』
「えー......」
『えーって言うけど、結構人気やねんで!?あとな、最近のAV業界って結構色々問題あるやん?無理矢理ヤったとか、ビョーキ持ちやのに黙ってたとか』
「うん」
『ゲイビ業界にも当然のようにそういうの蔓延しててな。そういうのをなくそうって、仲のいい仲間と新しいゲイビ会社立ち上げたん!』
「へぇ。すごいね」
『ふふん!』
芹沢さんもそうだが、変態でもセックス好きでも極めれば仕事になる。そこに需要があり、真面目に取り組むことはなにも悪いことではない。
『それよりみやたんは大丈夫?なにがあったん?』
「んー......電話じゃ言えない。久しぶりにユキに会いたいな。どっか暇な日ある?」
『いつでもええよ!みやたんに会いたいなんて言ってもらえる日が来るなんて、めっちゃ嬉しいー!......あっ、でも今週は仕事山積みやった......あうー、どうしよどうしよ』
「別に来週でもいいけど......それか、俺がそっち行こうか?」
『うっそん!ほんまに?ほんまのほんまに来てくれんの!?どしたんみやたん、なんか悪いもんでも食べた!?』
「なにも食べてないから......」
『ほな、明日は夕方には仕事終わるから、6時くらいに新大阪迎えに行く!』
「え、なにも明日じゃなくていいんだけど」
『いややー!俺が今すぐ会いたい!俺に時間あったら、始発で東京まで会いに行くのに!』
「いや、そこまでしなくていい」
『みやたん愛してる!明日楽しみにしてるな!ほな、今日は早寝するわ!朝イチで部屋の掃除しやなー!まった明日ね!おやすみー!』
「え、あ、おやすみ......」
喋るだけ喋り、勝手に予定を決めるだけ決めて電話は切られた。こういう一方的な感じが苦手だったのだが、今はユキのうるさい感じに救われる気がした。考えるより先に身体を動かさざるをえない。あの底無しの明るさが、俺にはないユキ特別の魅力なのだろう。久しぶりの大阪で、久しぶりに会える友人を考えて少しだけ楽しみな気持ちになった。
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