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「雅くん......他人の俺が言うのも何だけど、でも、自分だけを責めちゃだめだよ」
先生の手がふわりと俺の頭を撫でた。
「二人の人を同時に好きになってしまったことは、誰にも責められることじゃない。それに、二人のうちどちらかを選んでいれば、一人は幸せにできたかもしれない。けど、もう一人は?二人を選んだことで二人を幸せにできなかったと思っているみたいだけど、それは雅くんのせいだけではない。雅くん自身だって、幸せになる権利はあるのだからね。そして、人の心は誰にもどうすることもできないんだ。たとえ、自分の心でもね」
優しく諭すように、先生はゆっくり話した。その言葉は俺の中にすぅっと入っていったけど、それでも俺は俺を許せなかった。
「たつみくんとしょーごくんは、悲しんでるかもしれへん。けど、それはみやたんも一緒やん。みやたんが二人を好きにならんかったら、二人を幸せにできたん違う。二人が同時にみやたんを好きになったから、みやたんは幸せになれんかったんや。たとえばしょーごくんがみやたん好きになってなかったら、みやたんはたつみくんと万万歳やろ。しょーごくんだけが不幸になることもない。全部、タイミングが悪かったんや」
タイミング。それだけで片付けられる気持ちじゃなかった。自分自身より大切な二人だったから、幸せにしてあげたかった。なのに俺は与えられるばっかりで、今俺が感じてる感情は、その代償でしかないと思っている。
「......俺らが何言っても無意味なんやろうけどな。でも、俺はみやたんが好きやから、みやたんが悲しんでる顔は見たくない。......みやたん」
ユキがぎゅっと抱きついてきた。温かくて、甘い匂いがする。
「......俺は......俺は幸せだよ」
「......」
「一生分の幸せだった。二人に愛されて、本当に幸せだった」
「......それは二人もやで。みやたんに愛されて、幸せやったはずやん」
「......」
「みやたんは、もっと貪欲にならなあかん......もっともっと、幸せになるって思わなあかん」
自分が不幸だとは思わなかった。龍弥の温もりと彰吾の優しさは今でも身体中で覚えていて、それだけで満足だった。
「じゃあ、今日だけ言わせて......俺、今でもまだ龍弥と彰吾を愛してる......彰吾......好き、好きだよ......大好き......」
「うん。うん......」
溢れてどうしようもない想いをユキの中で吐き出した。泣いた分だけこの想いが薄まればいいのに、どこまでいっても変わらないどころか、想いは募るばかりだった。
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