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俺の束縛するような縄に囚われた雅の、仄かに笑みを浮かべた写真......それは快楽による悦びではなく、心からの喜びが現れていた。
俺は柚木の手元から目をそらしてコーヒーを啜った。柚木は次々と写真集を出してはああだこうだと感想を述べている。柚木の雅と俺に対する感想なんて飽き飽きするほど聞いてきたが、柚木は何度でも同じことを饒舌に語るのだ。
「雅さんはもちろん魅力的だし、成宮さんの緊縛術も他の緊縛師と違ってすごく魅力があるんだけど、やっぱり二人の絆に勝るものはありませんね......」
絆なんてない。そこにあるのは、必死に雅を引き留めようともがきながらめちゃくちゃに縄をかけている俺の欲望だけだ。
「......柚木は好きなのか?」
「え?」
「だから......雅のこと」
雅、とその名を声に出すだけで少し震えてしまいそうになる。誤魔化したつもりだが柚木にはバレバレで、悲しそうにフッと笑って俺にデコピンしてきた。
「好きですけど、成宮さんが思ってるような感情じゃないですよ」
そう言いながら俺の隣に座って、こつんと頭を預けてきた。
「そういうんじゃないです。......ついでに言うと、別に成宮さんに対して雅さんのポジションになりたいと思ってる訳じゃないですからね」
そう言いながらも、柚木は俺の手を撫でて、小指をぎゅっと握った。
「ただ......成宮さんが傷ついているのが悲しいんです。成宮さんと、雅さんが一緒にいないことが、俺にはとても悲しい」
「なんでおまえが悲しむんだよ」
「わかりません。......でも、二人が好きだった。恋でも愛でもなく、ただただ二人が大切だった。二人の時を永遠にしたかった。変な話ですけど......俺は二人の目に見えない空気に酔しれてたんです。二人の恋に、恋してるみたいに」
「......全然わかんねぇ」
「俺もわかりません」
「なんだそりゃ」
「この指に、赤い糸が海を越えても繋がっていればいいのに。俺がもっともっときつく結んであげれば良かった」
柚木の気持ちは俺には理解できなかった。ただ、柚木はいつも俺と雅の関係を後押ししてくれた。柚木には、雅にとっての龍弥の存在はよくわからなかったのだろう。盲目的なほどに俺との関係を応援してくれていたが、俺は自分自身より雅と龍弥の関係を守りたかった。それは柚木が俺と雅を想ってくれているのとは違い、ただ、雅のために、だ。
「......泣いていいですよ」
「誰が泣くか、ばーか。お前最近ナマイキ」
「雅さんが泣いてなければいいですけどね」
「大丈夫に決まってんだろ。あいつには、一番大切なやつが側にいるんだから」
俺の想いは、きっと枯れることはない。会えない日々はより深く心を抉り、俺はじんと痺れるような目の奥を誤魔化すように腕で隠して上を仰いだ。
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