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Ⅰ
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男性は固まる俺に紙袋を差し出した。
「私は、静さんの担当だったんだ。彼は最後まで君が現れるのを待っていたよ。だから、これを私に託した。
これは、彼が君に遺した君への想いだよ。出来れば、受け取ってほしい」
そう言われて、俺は差し出された紙袋をどこか機械的に受け取った。俺には何が何だか分からない。
俺の運命が、あの人?思いもしなかった。雲の上のような、液晶越しの存在が、俺の運命だなんて。実感できない。
「これは前代未聞の出来事だ。もしかしたら、次の運命が現れるかもしれない」
「……そう、ですね」
俺は他人事のように返事をした。全く受け入れられなかった。運命に二番目が存在するのか。
運命は一つだからこそ「運命」じゃないのか。
ぐるぐると考えが巡って、尚更混乱した。
高校に行く気にはなれず、そのまま俺は帰宅した。夏の日差しのせいで、誰もいない家は熱気でいっぱいになっていた。
窓を開けて換気し、その後窓を閉めてエアコンをつける。
冷蔵庫に入っていたアイスコーヒーをグラスに注いで飲んだ。
冷たいコーヒーが、ぼんやりする俺の頭を冷静にした。
ふと、研究員に渡された紙袋を見た。あの時は、俺の運命の相手があの人……織部静だったと知った衝撃でいっぱいだった。
冷静になって、俺の為に遺したというそれがとても気になった。
テレビの液晶越しに見ていたあの人が、一体何を俺に伝えたかったのだろう。
紙袋の中身は、大量のディスクだった。中身は映像か……?
番号が全部に振り分けられていて、俺はとりあえず①と書かれたディスクから再生した。
しばらく真っ暗だったり、ザザッとノイズが入っていたが……
数分後、現れたのはテレビで見ていたような笑顔ではない、本当に嬉しそうな顔のあの人だった。
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