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Ⅵ
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秋から冬へと変わり始める景色に、時間の経過を感じる。
世の中の高校生はセンター試験の為の準備を始めているのに、俺は全く勉強をする気にはなれなかった。
「志賀ー」
「はい」
担任に呼び出され、何度目かの面談。聞かれるのはいつも同じ、勉強をしているか。
俺はそれに対して「ちゃんとやってますよ」と嘘を吐く。
薫は相変わらず学校に来るし、椎名さんはどこから知ったのか俺のケータイに連絡してくる。
「志賀、また呼び出されたなー」
「うっさいぞ一木。勉強はしてるのか」
「アルファ様なめんなー!」
いつものように笑ってる一木に何だか癒される。何だかんだで、この抜けたアルファの友人が今俺の中で一番気を許せる相手なんだろうと思う。
「で?何かあった?」
「……薫とその運命の人との間に挟まれてんだがどうしたらいい、しかも仲最悪」
「オレナニモキイテナイ」
「卑怯だぞこの野郎」
一木は楽しそうに笑って、それから真剣な顔をした。
「なあ、前にも言ったけどさ。本当に嫌なら俺がどうにかしようか?」
「いい。お前を巻き込むつもりはない。俺の運命は「織部静」一人。それだけで十分だ」
最近は薫と椎名さんのおかげでディスクを再生する暇もない。ディスクは⑮で止まったままだった。早く見たいのに。
織部が、どんな言葉を俺に遺したのか知りたいのに。
「お前のそういう一途な所が好きだわ」
「俺はお前の抜けてる所が嫌いだ、薫にバイト先教えやがって」
「それは謝ったっしょ!?」
「あれから俺の苦悩が始まった気がする」
「悪かったってば!」
一木と話しながら、俺は図書室へと向かっていた。勉強する気にはなれないが、静かに過ごすには図書室が一番だ。
図書室で、最近は見ていない織部の声を、姿を思い出していたかった。
「5分前に呼びに来ようか?」
「助かる」
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