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Ⅶ
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「辛かったね」
荻先生がそう言って俺を抱きしめた。先生の体温をどこか他人事のように感じながら俺は先生を見上げた。
「荻先生、俺は病気ですか?」
「……恐らく、君は「運命の相手」が死亡したショックでヒートが来ないんだよ」
先生が震える声でそう告げた。昔保健の授業で、女子には月経……つまり「生理」がある事について習った事がある。
あれは普段は定期的にあるのだが、ストレスなどで予定から遅れたりする。酷い時には生理自体がない。
それと同じなのだと先生は言った。
俺は織部がいないショックでストレスが溜まり、ヒートが来なくなってしまった。だから四か月経っても来ない。
それを俺は少し安心していた。最初のヒートが最悪だったからどうしても怖かった。
「でもね、志賀くん。裏を返せば、それはとても危険なんだよ」
「危険?」
「溜まりに溜まったヒートが、どこで爆発するか分からない。もしかしたら、廃人になってしまうほどの快楽に身を侵される可能性もあるんだ」
「――――!」
あの時以上の……。あの時ですら、俺は一週間熱に浮かされ織部を求め続けた。頭がおかしくなるほどに織部の熱を求め、ひたすらに快楽が欲しかった。
あれ以上を……また?俺は恐ろしくなってゾッと寒気がした。
「君も知っていると思うけど、君はオメガの中でも「特殊」だ。君に関する事は全て政府の研究機関に報告しなきゃいけない。……君の担当さんに報告するよ」
「……はい」
荻先生はちょっと俺から離れて持っていた端末から電話をかけた。俺はこれからどうなるのか不安になって……。考えれば考えるほど、体から熱が消えていった。目の前が真っ暗になりそうだ。
「え!?」
いきなり荻先生が大声を出した。素っ頓狂な声を上げてどうしたのかと思えば、驚いたような顔で俺を見た。
「志賀くん、担当さんがここまで来るって」
「今、から……?」
「うん……」
どういう事なんだろう。不思議に思っていれば、数分もしないうちに診察室の扉がノックされた。
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