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ⅩⅠ
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翌朝、抑制剤を飲んだ後薫が言った。
「送って行くよ?」
「いい。……アンタ仕事だろ」
「午後からだし。あ、そうだ。今日帰れないかもしれない」
「仕事だろ。俳優なんだから、今まで帰れてたのが不思議だ」
じゃあ行くから。そう言って俺はバッグを持って出ようとした。
薫が俺の腕を握ってそれを引き留めた。何だよ、と言おうとして薫の顔を見て。
何も言えなかった。ゾッとするような顔を、していたから。
「僕が送っていきたいだけだよ」
一瞬で薫は元の表情に戻っていたけれど。何だか、薫の顔が俺の知らないものになっている様な気がした。
俺の、気のせいなのか……?
「雪人?……もしかして、具合悪い?休む?」
「い、いや。何でもない」
「無理はしないようにね。じゃあ行こうか」
俺は結局薫の車に乗せられて大学まで来た。でも、俺の性格を知っているだけあって大学近くのちょっと目立たない所で下してくれた。
「じゃあ、また後でね。具合悪くなったら連絡するように。すぐに行くから」
「仕事優先しろよ。……ありがとう」
薫は少し心配そうにした後、俺の服を引っ張った。
驚く間もなく、薫の顔が至近距離にあった。そして、頬に何かやわらかいの……って。
「あ、あんた……ッ!?」
「心配だから。仮にも「運命代理」だし、これくらい良いかなって」
「何がこれくらいだ!!」
俺が怒鳴るのを見て、薫は「ごめんごめん」と笑いながら安心したように俺の頭を撫でた。
「良かった、それくらい怒鳴れるなら大丈夫だね。行ってらっしゃい」
仕事に遅れそうなのか、逃げているのか。
薫は「何かあったら連絡はしなさい」と念を押して去った。
残された俺は、頬を押さえながら言った。
「……どこの恋愛小説だよ……」
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