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億劫になるくらい暑くて
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「掃除でもするか」
今日は何の予定も無い。出来たアイスコーヒーを飲んだ後、部屋をぐるりと見渡して掃除する事に決めた。
いつもは知らない内に薫がやってくれていた。自分の部屋はされたくないらしい。エロ本でも隠してんだろうか。いや、アルファ様だしそれは無いか。
溜息を吐いて、掃除機を引っ張り出す。ガーと煩い音を立てながら広い部屋を掃除していく。
全部順番に掃除をしたら、当然残るのは薫の部屋だ。いつも無断で入っているんだ、俺だって薫の部屋に入っていいと思う。
開き直った俺は薫の部屋に入った。掃除だけしてさっさと出よう、そう思って掃除機をかける。
ベッドの下でコツッと音がする。何かに引っかかったらしい。掃除機を避けようとしたら、押し倒してしまったらしく雪崩が起きた音がした。
「あ゛ー、悪い薫……」
何かよく分からんが隠したかったものだろう。責任をもって片付けておこう。
ベッドの下を覗き込みながら取り出すと、それはディスクだった。それも、見覚えがある。見覚えは、あるのだが。
思い出すまでに少しかかった。
「何で、コレがここにあるんだ?」
それは、織部が俺に残したディスクだ。確か、20までは見た覚えがある。
最近はディスクを見る事も忘れて、バイトに専念していた。一刻も早くこの部屋を出る為だ。
でも、ディスクは俺の部屋にあるクローゼットの上の棚に置いていた。いつもあったと思っていたのに。
「久しぶりに、見てみようかな」
薫の私物じゃないし、元は俺の物だ。薫が間違えて持って行ったんだろう。
こういう事は誰かと同居している時には起こりやすいことだ。
俺はディスクを抱えて部屋に戻った。それから一旦中断していた掃除を終わらせ、またコーヒーを片手に部屋に戻る。
「どこまで見たっけな」
21と書かれたディスクを入れて、読み込むのを待つ。相変わらず映った先には、織部が俺に向かって笑っていた。
「ちょっと暑いなぁ。君は暑くない?私は冬生まれだからか、暑さが苦手なんだ」
困ったような顔をしている織部がそう言う。どうやら、夏に撮ったらしい。偶然にも季節が合っていた。
暑さが苦手だと言う織部は子供のように可愛くて笑った。
「夏バテだけは私の天敵だね、毎年苦労するよ……。正直に言うと、仕事もしたくないと思ってる」
「俺もだよ、あっちぃ」
久しぶりに聞いたその声は、やっぱり薫とは違う。愛おしげで優しくて。
俺にだけ向けられたと分かる彼の素は、俺に熱を与えてくる。
顔が似ているだけで、俺の「運命」とは別人。やっぱり、薫とは離れなくては。
織部を、裏切らない為にも。生涯、俺が愛してるのは織部だけだと決めたから。
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