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The wing which died surely turns into love
置いてけぼり
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佳梛と供に、家を出て、近くのスーパーまで歩く。
雲一つない青空の下、ほんの数分の距離が、やけに長く感じた。
……絶対、この絶不調の身体のせいだ。
「あー、腰痛ぇ……」
腰をとんとんと拳で叩く俺に、佳梛は可笑しそうに笑う。
「はは……、じじクサっ」
ケラケラと笑う佳梛に、じとっとした瞳を向けた。
「お前のせいだろうがっ。発情期の獣がっ」
腰を叩いていた拳を、そのまま佳梛の脇腹へと見舞う。
「ぃって……。結芽が体力、無さすぎなんじゃないの?」
大した痛くもなさそうに声を放った佳梛は、俺へと馬鹿にするような視線を向ける。
確かに、ろくな運動もしてないし、日がなゴロゴロしている俺は、体力がない。
くっそ。何も言えねぇじゃねぇか……。
春先の割に、暑い今日。
じりじりじわじわと、ゆっくりと、日光が身体を焼いていく。
「あちぃ~」
Tシャツの首許を摘まみ、ばふばふと空気を送る。
外気も熱い今日は、そんなコトをしても、さほど涼しくもならない。
さらに…。
半目で視線を向ける俺に、佳梛は不思議そうな瞳をこちらへと向けた。
「何でお前こんなに暑いのに長袖着てんの?」
不遜気に声を放ち、手の甲の半分ほどまで届く佳梛の長袖の裾を摘まむ俺。
佳梛が長袖を着ているコトは、完全に、暑さに拍車をかけている。
「日に焼けるの、ヤなんだよね~」
佳梛は、裾を摘ままれた右側の手を隠すように、服の端を伸ばした。
「女子かっ」
けっと声を放つ俺に、佳梛は、ケラケラと笑った。
佳梛の笑い声が、おかしなほど、ぴたりと止んだ。
瞳を向ける俺の視界には、ムッとしたような顔をしている佳梛の姿。
佳梛の視線の先を追う。
視線の先を辿る俺の瞳に、公園のあいつの姿が見えた。
男は、俺の姿を認識した瞬間、顔を歪め、慌てたように踵を返した。
「結芽、ここで待ってて……」
俺へと向けた瞳を細くし、にたりとした笑顔を浮かべた佳梛は、地面を蹴った。
どうせ走れないでしょ…と小さく付けたし、だっと走り始める佳梛に、俺は、ぽかんと立ち尽くしていた。
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