アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
The wing which died surely turns into love
ノイズの走る視界
-
放った言葉を否定するように、俺は、頭を振るった。
「……お前は、悪くない」
佳梛は、きっと、俺じゃない方が幸せなんだと思うけど。
佳梛は、俺に飽きたのだと思うけど……。
俺になど、好意を抱いていないのだろうけど……。
「人の気持ちなんて、変わって当たり前だ。お前のコト、責めたい訳じゃねぇ……」
本心は、手放すことなど考えてはいない。
考え、られない……。
俺は、佳梛を手放したく、ない……。
我儘で、ごめん。
佳梛の為には、手放さなくてはいけなくて。
でも、俺は、それでも佳梛と居たいと願っていて。
相反する感情が、胸の中で葛藤を繰り返す。
葛藤する心の奥では、佳梛が他の男と供に居る情景が、映し出される。
ぐるぐると渦巻く真っ黒な感情は、真面な言葉を奪っていく。
ただ、腹立たしくて。
ただ、やるせなくて。
「苛立ってる自分に、腹が立つんだよ……っ」
髪に差し込んだ手を、ぎゅっと握る。
ぶちぶちと髪が切れる感触が、頭に、手に、響いてくる。
まるで、胸を引き裂かれるような痛みを伴って。
「お前のために、俺、頑張ってんのに! どういうコトだよ! くっそ……」
佳梛のため。佳梛のせい。
そんなの責任転嫁に過ぎないのに。
納得いかない感覚に、ただ、八つ当たりのように佳梛に怒りを向けていた。
……俺だって。
佳梛がいるのに、他のヤツとシようとしていたじゃないか。
佳梛ばかりを責めるのもおかしな、…話……?
何かが、腑に落ちない。
妙な気持ち悪さが、胸を埋め尽くしていく。
『関係ないっ! お前なんて知らないっ』
目の前の佳梛の声とは違う音が、俺の脳内で再生された。
佳梛の姿を確認したくなり、ちらりとした視線を向ける。
瞳に映る佳梛の姿に、ノイズが走った。
ザザッと砂嵐のように、視界が霞む。
きゅっと寄せる眉根に、佳梛の顔が、心配そうに歪んだ気がした。
佳梛の手が、俺のこめかみを掴む。
あぁ、くっそ。
意識が削がれていく。
怒っている筈なのに、大きな波に飲み込まれるように、怒りが凪ぎ、目の前が真っ白に染まっていく。
佳梛に掴まれるこめかみに、俺の意識は、途切れてしまう。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
34 / 110