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The wing which died surely turns into love
説得に近い問い
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結芽が出掛けている間に、月香の姿を探した。
月香に縋ったところで、どうにも出来ないだろうと感じてはいたが、頼らずにいられぬほどに、俺は、弱っていた。
月香が処置してくれる、翼の修復を断ればいいのだろうか。
翼が修復されれば、それだけ呪力も上がり、毒素も溜まる。
治さなければ、毒素の溜まりも弱まるだろうか。
でも、治さなければ、俺の命が短くなるコトは明白だ。
「私のコト、探していたんですか?」
ふわりと俺の前に舞い降りた月香は、訝しげな瞳を向けた。
面倒臭そうに吐かれる言葉に、俺は、安堵の息を零していた。
「身体…、辛いですか?」
きゅっと眉を寄せ、問う月香に、情けない笑みを浮かべる俺。
俺の手を引いた月香に、腕を引かれ、歩いた。
「ちょ…、どこ行くの?」
強引に歩を進められながら、問う俺に、月香は、木々が鬱蒼と茂る公園の中へと入る。
少しだけ中へと足を進め、そのまま月香の腕の中へと収められた。
「監視者になりました」
ぼそりと放たれる月香の言葉。
俺を抱き締めたままに、話す月香の表情は、見えない。
シャツの裾から入り込んだ月香の手が、俺の背に触れる。
「帰りますか? 私の傍に、…私の監視下に置けば、貴方は向こうで暮らせます」
貴方に自由はありませんが…と、ついでのように付け足した。
「背中の封印は解けませんが、翼が衰退するコトは、…貴方が朽ち果てるコトは、無くなります。身体だって、向こうに住めば、少しは楽になりますよ」
ゆっくりと諭すように紡がれる言葉に、俺は、少しだけ楽になる身体に、月香の肩へと顔を埋めた。
「帰りましょう……?」
質問というよりは、説得に近かった。
たぶん、結芽が居なければ、俺は、何も考えずに首を縦に振っていただろう。
でも、今の俺は、ここを離れるコトを良しとはしない。
顔を上げ、月香を見やる俺の瞳に、諦め半分の笑みが映る。
「ですよね……」
俺の返答を見透かしていたかのように、月香は深く息を吐く。
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