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The wing which died surely turns into love
苛立ちに荒ぶる心 < Side X
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「結芽っ!」
ふっと意識を持って行かれたように頽れる結芽の身体を慌て、支えた。
ぎりぎり頭を打たずに済んだ程度で、身体は、軽く地面へ落ちてしまった。
「大丈夫ですか?」
すっと近くに腰を下ろした男の顔を見やり口を開こうとした。
「げ……」
名前を呼びかける俺に、月香は、唇の前で指を立てた。
月香の背後で立ち尽くす彼らを振り返る。
「私は医者です」
彼らを納得させるように、安心させるように、月香は口角を上げた。
医者に成り済ました月香は、結芽へと瞳を戻し、言葉を繋ぐ。
「貧血、と言ったところでしょう。念のため、私の病院に連れて行きましょう」
俺に視線を向け、月香は、結芽を担ぐように目配せする。
俺は、力なく横たわる結芽に背を向ける。
月香は、結芽を持ち上げ、俺の背へと預けた。
小さく頭を下げた月香に、本物の佳梛は、心配そうな瞳を向ける。
貴方たちが居ても何もできないでしょう…、言葉にはしないが、月香の威圧が、彼らの動きを制していた。
俺の肩口へ預けられている結芽の顔。
月香は、結芽の額に触れる。
ただ、起きないように眠らせただけのように見えた。
記憶を消そうとは、していない。
弄りすぎた記憶に、結芽の精神が追いつかなくなったのかもしれない。
結芽は、このまま目覚めないかも知れない。
どくん、どくんと俺の心臓が、嫌な音を立てていた。
少し彼らから離れた場所で、俺は口を開いた。
「消してくれ。結芽の、…会った、あの彼との再会の記憶っ……」
動揺する俺は、真面な言葉を紡げない。
それでも、月香は俺の言わんとしているコトを汲み取った。
「今、消しても、一緒ですよ。また、あの人に会えば、戸惑うことになる」
睨むような鋭い月香の視線に、俺の中の怒りに火が灯った。
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