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The wing which died surely turns into love
羽型の呪縛と、別れの言葉
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月香の手が、再び、結芽のこめかみを掴んだ。
結芽は、抵抗しようとは、しなかった。
「忘れちゃうのか…。なんかヤだけど、しゃーねぇよな」
はぁっと諦めるように息を吐いた結芽は、指の隙間から俺に瞳を向けた。
「あ、ちょ、…待って!」
慌て頭を引こうとする結芽に、月香は、不服気に顔を歪めた。
「音里、あと何年くらい生きられんの?」
結芽の瞳は、月香を見やっていた。
「俺の記憶、消されて、そっこうで消えられたら、…なんてかこう、さ?」
きゅっと掌の奥で寄せられる眉根に、月香は、はぁっと面倒そうに息を吐く。
「短くなると言っても、貴方とさほど変わりません」
面倒そうに、月香の言葉は、続けられた。
「こちらに居続けた場合、音里と、貴方の寿命は、さほど変わりません。直ぐに朽ちる訳では、ありません」
月香の言葉に、結芽と供に、俺も大きく安堵の息を吐いた。
ぐっと入れられた月香の力に、結芽はその場に、頽れた。
結芽の身体を支える俺の背後に回った月香が、翼をくっと掴んだ。
何事かと振り返る俺に、月香は言葉を紡ぐ。
「貴方の中に残っている僅かな呪力を球状の封印の中へ閉じ込めました。これで、少しは貴方の命も延びます」
黙っていたら、1年も絶たずに……、と、そこまで声を放った月香は、言葉を詰まらせた。
数枚の羽根が、床に散らばっていた。
月香は、2枚の羽根を拾い上げると、1枚を結芽の胸元へと押し当てた。
そこには、両翼を広げたようなデザインの銀色のネックレスが光っていた。
「これは、呪縛です。この方が貴方を裏切ったら…死にます」
するりと俺に向けられた瞳は、射るような鋭さを持っていた。
「音里……貴方にも、つけますよ」
もう一枚の羽根を俺の左の鎖骨の辺りへと押し付けられた。
「いいよ」
俺が肯定の声を放った瞬間、ジリッと焼けつくような痛みを感じた。
そこには、1枚の羽根の刺青が刻まれていた。
はぁっと小さく息を吐いた月香は、身体を翻し、放ったスーツを拾いながら、玄関へと向かう。
「……さようなら、音里」
微かに震えを纏った月香の声が、部屋に響いていた。
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