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The wing which died surely turns into love
簡単に叶わないのは、生きているから
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陽静は、苛立ちを隠さぬままに、親指で自分の唇を擦った。
私の仕草に陽静の苛立ちが、溢れ出ていた。
「自分で無き者にしたんだろ?」
自分を見て欲しいくせに、必死に気持ちを誤魔化し続けた。
音里を求め続ける、自分を見てくれない私に、業を煮やした。
陽静の我慢が、限界を迎えた……。
「いつまでも思ってたって、報われないじゃん……」
むっとしたままに、拗ねるように陽静は、床へと視線を落とした。
私だって、出来ることなら、貴方を愛したい。
だけど、知っているから。
音里は、幸せに生きているコトを知っているから。
簡単に貴方を愛するコトは、叶わない……。
「生きていますよ」
言葉に陽静は、訝しげな瞳を私へと向けた。
「ここの者には、わからないように、普通の人間にしか見えないように隠しているだけ……」
軽く開いた自分の掌を見詰める。
私は、この手で、音里を戻れないようにしたのだ。
「私がかけた呪縛です。私には、音里の居場所は、わかります……」
そう。
私が探せば、音里の居場所など簡単に見つけられる。
私は、事の顛末を陽静へと説明した。
「はぁ……」
私の言葉が切れたタイミングで、呆れとも安堵ともつかない息を吐いた陽静は、くっと口角を上げ、言葉を紡ぐ。
「会いたい?」
私の刑期は、100年ほどだ。
たとえ今、音里が生きていたとしても、刑期を終える頃には、間違いなく居なくなっている。
でも、私の一存で会いになど行けない。
私は、そんな立場にない。
声を発しない私に、陽静が腰を上げた。
「よし、会いに行こう!」
急な陽静の提案に、私には、何を言う権利もない。
ただ、陽静に連れられ、音里に会いに行くしかない。
会いたくない訳じゃない。
一目でもいいから、見たいと思ったコトだって何度もある。
だけど。
会えたところで、どうにもならない。
私の気持ちは、消えも掠れも…、変わりもしないだろう……。
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