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涙。
-
ぬるま湯のなかを漂う様な、
曖昧で中途半端で、そして。
───不思議と安心する、変な感覚。
夢から覚めたような、その感覚に似ている。
手がなにか暖かいものに包まれている。
力無く、握られている。
誰の手かな、と思う。誰か自分にとって
────────とても大切なひと。
自然とひとりの顔が頭に浮かんだ。
だいすきなひと。男同士だけど、
そんな事は関係ないくらい、すきなひと。
目を、開けた。
だいすきなそのひとが目の前にいた。
「────ヒラ」
────────名前。
────・・・・・・僕の、名前。
「ふ、じ・・・・・・?」
フジが目を開けて、僕の名前を呼んでいる。
僕を、見つめている。
「ふ、じぃ・・・おき、たの・・・?」
「うん、ちょっと前に」
「その時、僕は寝ちゃってたんだ・・・」
思わぬ失態に頭を抱えようとすると、
フジがそっと僕の頬に手を添えた。
「また・・・・・・隈ができてる」
溢れそうになる涙を、男らしい指が拭う。
「・・・・・・寝てなかったでしょ」
「そ・・・・・・フジが心配だったんだべや!」
そう言うと、フジが少し驚いた顔をする。
「心配、してくれたんだぁ」
「あ、たり前だべや!」
仲間なんだし、と付け足すと、少し、
落胆したような顔になる。
百面相みたいでなかなか面白い。
「・・・・・・ねぇ、告白の返事、今していい?」
「んぇっ」
少し変な声が出てるよ。
「んんん、いいよ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・僕も、好き」
フジがぽかん、としている。
やっぱ百面相みたいだな。
「フジが、・・・・・・好き」
「それは、仲間として?友人として?」
「恋愛感情的な意味に決まってるだろ!」
大声を出してしまった。あっぶねぇ、
ここ病院だよ。
「同情とか、罪悪感でそう言ってるの?」
何、言ってるんだよ。気づかなかっただけで
僕は前からずっとフジが好きだ。
涙が溢れ落ちる。布団を濡らしていく。
「違、う。ほんとに、フジが、好き」
嗚咽の合間に言葉をのせる。
「・・・・・・ほんとに?」
「ほん、と、だって・・・・・・!」
フジも、泣いていた。
ぼろぼろ涙を零し、こっちをみる。
透明な雫が落ちてゆく。あぁ、綺麗だなぁ。
「うん、じゃあ、宜しくお願いします」
「・・・・・・・・・・・・付き合うの?」
「ヒラは、嫌?」
「嫌じゃ・・・・・・ない・・・・・・!」
ぽろ、とまた涙が零れた。嬉し涙、かな。
「宜しく、お願いします・・・・・・!」
こつん、と額に軽い衝撃。
フジの整った顔が目の前にあった。
額をくっつけたまま、フジが笑う。
─────その時、がらりとドアが開いた。
「あー!フジ起きてる!」
「・・・・・・て、俺ら邪魔だったな」
ぴったりと引っ付いている僕達を見て、
流石のこーちゃんは空気を読んだらしい。
「大丈夫大丈夫出ていかなくていいから!」
恥ずかしくなってフジから離れた。
そしたらフジが僕の腕を掴んで、
僕を近くに寄せる。
────待って待って馬鹿フジ心の準備が!
とあわあわしていると、耳元で
「退院したらいちゃいちゃすればいいよね」
と囁いてきた。馬鹿フジィィィィィ!
恥ずかしい!すっごい恥ずかしい!
────────────────────────────
冒頭の『────名前。』の所までは、
フジかヒラか、どっちが喋っている?のか
分からないようにしています。
『俺』とか『僕』とか使わなかったり。
気づいてくださると良いのですが。
そしてこの解説自分でやるの恥ずかしい。
語彙力の無さで伝わらないんです。
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