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⑧
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それから俺は、遼さんに全てを話した。
あの日、起きたら誰も居なかったこと。
借金のこと。学校をやめたこと。
バイト漬けの日々に嫌気がさして、夜の街をさまよい歩いていた事。
全て話終えるまで、遼さんは優しく頭を撫でながら、何も言わずに聞いてくれた。
俺は、泣かなかった代わりに、眉間にしわが寄るのがわかった。
遼さんは、俺が話し終わると、立ち上がって俺の隣に座った。
そして、ゆっくりと口を開く。
「‥‥頑張ったね、要くん。
おいで、泣いていいんだよ」
そう言って、ぎゅ、と俺を抱きしめた。
スーツから漂うふわりと鼻をくすぐる香水の優しい香りと、俺を包む温かさに、俺は堪えていたものを吐き出すかのように、泣き出した。
✱✱✱
ーどのくらいそうしていたのだろうか。
俺は涙も止まって、ぼやける視界のまま遼さんを見上げた。遼さんはずっと俺が泣き止むまで、背中を撫で続けてくれた。
俺はぼやける視界を晴らそうと、目を擦ろうとした。すると、その手をグッと掴まれた。
「あ、駄目。赤くなるよ」
そう言われたすぐ、瞼に柔らかい感触が当たった。顎に手を添えられている所が、熱い。
目元に触れているものが唇と気付いた時、俺は固まって、自分でも分かるくらい赤くなった。
「ん、要くん?‥‥あ、ごめん?!
俺何してるんだろ‥‥
気持ち悪かったよね、ごめんね」
そう言うと遼さんは顔を離した。
それでも少し赤くなった顔が近くにあって、ドキッとする。
手は離されないままで、赤くなった顔を隠そうと俺は慌てて俯くと、頭上から声が掛かった。
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