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そばかすの散った顔
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小学生の時雨の日だけ遊んでいた友達がいた。
そいつは色素の薄いサラサラとした茶髪でそばかすが顔の真ん中に散りばめられていることを時節嫌がっていた。
「なんか、恥ずかしい」
そいつと遊ぶときはいつも屋内だった。あまり陽に当たることが良くないらしい。
俺は外で遊ぶ事が好きだったから雨の日にだけそいつと遊ぶという暗黙のルールがあった。
雨が降ったら他の友達よりもそいつ優先だった。
「俺引っ越すんだ」
ある雨の日に俺は言った。
そいつは眠そうな眼を瞬かせて
「そうなんだ」
とだけ言った。
引越しの前日、そいつが公園に来た。
今日は1人だし虫取りでもしようと思って散策に来ていたのだ。
じりじりと熱を放つ晴天の中、そいつは長袖なんか着て帽子を深く被り飄々と立っていた。
「お前、晴れてるけどいいの?」
俺が訝しげに汗を拭いながら尋ねれば
「大丈夫。今日だけだから、あつき君と思い出作ろうかなって」
へらりと笑って服の袖で細い指を隠そうとグイグイと伸ばしている。
「……虫取り行くけど、くる?」
こくりと頷き颯爽と歩き出した俺の後ろを遅れまいとついて着た。
その後は、公園の外に出て小川や木々の、近くを歩き虫や魚を見つけてはしゃいだ。
俺はあの時止めるべきだったと後悔することになるなんて思ってもいなかったんだ。
………………………………………………………………………………
「アツキ君は中学生なったら部活なにする?」
「俺は、バスケとかサッカーかな。あ、でも陸上もいいなぁ」
木々の立ち並ぶ小川の近くを2人で歩きながら会話は今後のことになっていた。
「運動神経いいもんね。どれでもいけそう」
「褒めたってカブトムシやらねーからな」
ヘヘッと笑って振り返るとそこにあいつの姿はなかった。
「……しゅう?」
今さっきまで話していたのに?
急いで今来た道を戻ろうとすると木の陰でうずくまる陰があった。
「おい! しゅうどうした? 体調悪いのか?」
肩を揺さぶると下を向いたまま苦しそうに
「ごめん……」
とだけ小さく言った。
訳が分からないかった。 心臓がドクドクと早く脈打つ。
嫌な汗が背中を伝った。
「顔見せろ」
そう言って肩をぐっと引きこちらを向かせると真っ赤な顔に蕁麻疹のようなものが現れていた。日焼けとは言えないレベルにひどい。
無理やり向けられたその顔は苦痛とも悲痛ともとれる悲しそうな顔をしていた。
口をパクパクとさせ何か言おうとしていたが、途端にどさりと砂袋のように地面に倒れこんだ。
その後はあいつが意識を失い大変だった。 あたりを走り回り田んぼの近くにいた爺さんに助けを求めあいつは病院に行ってしまった。
母からはこっぴどく叱られた。
その晩は、なかなか寝付けなかった。
目を閉じると苦痛に満ちた顔をしたあいつがこちらを見て倒れるところが浮かぶ。
それを拭うように枕に頭を押し付けた。
顔を上げ、ぼんやりと光る枕元のライトを見る。
1人の友人を死なせるところだった。それが何時迄も心にのしかかったのだ。
次の日出発の前に病院に寄った。眠っているあいつの顔の赤みは大分引いていた。
俺はあいつになにも言えずに次の日引越しをした。
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