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――1日の授業が終わり、放課後。
今日は西陽がやけに眩しかった。燃えさかるような橙が教室に射し込んでいて、蛍光灯の人工的な色までもを染め上げている。
佐保が鞄を手に立ち上がった。
「じゃあ、オレはデートだから」
……傷だらけになるだけの行為をデートよわばり、ねえ。
よくやるな、と思いつつも、俺はいつもの如く「じゃあな」と声をかける。そうするといつも気の抜けたような声で返事が返ってくるので、ああいつもの佐保だと無意味に確認してしまう自分がいた。
「折原、行くぞ」
緩慢な歩みで教室を出ていった佐保を見送ったあと、今度は西永が立ち上がってそう言った。
「もうそんな時間か」
時計を確認すれば、時刻は既に四時半を回っていた。今日は五時から風紀委員の緊急の集まりがある。
なんでも風紀委員長のお達しらしいが、緊急を要する案件、その中身が分からない。特に心当たりはないのだが、委員長の慧眼からして相当な案件なのだろうとは思う。
二人で教室を出て、会議室へと向かう。
西永も風紀委員の一人だった。
去年は別のクラスだった西永とは、風紀委員を通じて仲良くなった。風紀委員は各学年に二人ずつしか配置されていない割に仕事量が多く、一緒に活動する機会がかなりあるため、余程のことがなければ仲良くなることは必然的と言えるだろう。
風紀委員には入学当初に前委員長のお達しを受けて以来所属しているが、何故自分が選出されたのかは未だに分かっていない。
俺は良くも悪くもないくじ運によってだと勝手に思い込んでいるが。
「おう、来たか」
会議室にやってきた俺たちに委員長が声をかける。会議室には既に先輩方がいた。
「あ、おりちゃんだ~~~!」
「うべばぶごっ」
前方からやってきた副委員長が俺に飛びつく。毎度のことながらいちいち不意を突いてくる性格の悪さである。腹を抉られるような衝撃に耐え、なんとか先輩を抱き止める。しかし今度はぎゅうぎゅうと肢体を締め上げられおいおいちょっとこれキマってんじゃねえのギブギブギブギブ。あれ俺ってば白目剥いてね?
「春野先輩、折原が死にかけていますので放してやってください」
「え~~~」
渋々といったように俺から離れる春野先輩。相変わらず愛くるしい、天使のような見目をしているが、俺からすれば悪魔にしか見えない。一体これは何の儀式なのだろう。
委員長こそ全校生徒に畏敬の念を抱かれているが、真に恐れなければならないのはこの春野先輩の方だということを忘れてはならない。
「……あー、西永、助かったわ」
「さすがに白目を剥いていたら、な」
あ、やっぱり?
「茶番は終わったか」
「人生が終わる前にはなんとか」
「終わってねェじゃねーか」
委員長の暴言はいちいち真に受けていたら身が持たない。よって生来の軽口で応酬するが余裕で俺のキャパシティを越えてくるのが委員長様である。
……あれ、もしかして茶番って俺の人生を指してたりしちゃう感じです?
会議用に用意された席。その定位置は、ホワイトボードを背に先輩方、左側に俺たち二学年、そして右側に一学年が座ることになっているが、今日はまだ来ていない。遅れている理由が大方想像出来る辺り愉快だ。
「一年が一番遅ェってどういう了見なんだろうなァ」
危うくも委員長の機嫌が傾き始めたとき、会議室の引き戸が勢いよく開かれた。噂をすればなんとやらである。
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