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失ったモノ
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「頭を強く打ったので、一時的な記憶喪失かもしれません。」
「キョウヤ…。」
キョウヤの手を握ったまま、ずっとそばにいるが、手を握り返してくれない。
親たちが何やら先生と話しているが頭に入ってこない。
「キョウヤ…。」
胸が苦しい。
キョウヤに触っても、キョウヤじゃないみたい。
涙が溢れてきた。
「…!」
泣きじゃくるオレを見つめ、困ったような顔をするキョウヤ。
いつもなら抱きしめたりキスしたりしてくれるのに…。
「泣かないで?ごめんね。思い出せなくて…。オレたちは、何?どういう関係なの?幼なじみって言っていたよね。」
「…幼なじみで、親友…。」
「幼なじみで、親友か。名前を聞いてもいい?」
「サク…。百瀬サク…。」
「サク君かぁ。」
「…。」
他人みたいなキョウヤを前にして、涙が止まる。
思わず握っていた手も離してしまった。
「オレの名前も教えてもらえる?キョウヤって言うんだよね。名字は?」
「黒羽…。黒羽キョウヤだよ。あの人がキョウヤのお父さん。オレの両親があっちの二人で、眼鏡かけてるのが、オレらの担任のマモルせんせ。」
「ありがとう。サク君。」
「なぁ、サク君って呼ぶの辞めてくれよ。気持ち悪いから。」
「初対面の子に呼び捨ては…しにくいなぁ。」
「幼なじみなんだから、呼び捨てでいいだろ!」
「うん…。分かったよ、サク…。変な感じだな。」
「なんだよ。じゃあ、キョウヤが呼びたいように呼べよ!」
「ありがとう。サク君。」
「うわぁ!気持ち悪い!」
「ふふっ、君って面白いね。」
ニコッと笑うキョウヤは、やっぱり他人のようだ。
幼なじみでも親友でも、もちろん恋人でもなくなっちゃった。
大事な人を失ってしまったようで心にポッカリと穴が空いた。
でも、元気なふりをして、キョウヤとの会話に集中する。
「百瀬、黒羽。先生、そろそろ帰るな。黒羽…、少しずつ思い出して行こうな。みんなでフォローしてくから。百瀬も絶対に自分を責めるんじゃねぇぞ。」
マモル先生が、頭をガシガシと撫ぜてきた。
いつも通りに接してくれている。
普段ならキョウヤがマモル先生を睨むけど、無反応。
マモル先生もそれに気付いてるみたい。
「せんせ、ありがとっ。」
「元気出せ。百瀬。お前の愛の力で、黒羽の記憶を取り戻せ。多少、エロいことしてもいい。許可する。」
「はぁ?!しねぇし!」
「あはは。元気そうじゃねえか。その方がお前らしいよ。」
また、頭をガシガシ撫でてから帰っていった。
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