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【番外編】金と黒 24
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健人と会ってから、明は警戒をしていた。
再び健人や、もしかすると祐馬たちに会ってしまうかもしれない。特に健人は伝えるつもりではなかった“好き”を完全に伝えてしまったため、今となっては凛よりも会いたくない人物である。
知っている人影がないか周りをしょっちゅう見渡したり、職場や家にはさっさと入ったり。色々と気をつけてみたものの、いつまでも健人は現れなくて、そんなに神経質になる必要はなかったみたいだ。
そうとなると、一度来ないと判断したら急に気が抜けてしまう。バーにも行くのを少しの間やめていたが、明は早速向かうことにした。当分抱いてもらっていないし、健人のことがあったから酷く抱かれたい。
そう思っていた矢先だった。
「明」
「え……健人、なの? なんでここが……」
「俺の情報網なめんなよ」
よりによって、健人は明が向かったバーの前にいた。しかも、声をかけられた時、すぐに健人だと判断がつかないくらいに健人の容姿が変わっている。目立つ金髪は暗めの茶系に、たくさんつけていたピアスも耳朶だけにしか見当たらない。
今の健人の姿は、以前の姿からまったく想像のつかない姿だ。どういった心境でそうなったのだろう。もしかして明が嫌いだと言ったから……なんて、そんなまさか。それは自惚れすぎだ。
「……今日も男漁りか」
健人は、明に強めの視線を向けて聞いてきた。明も雰囲気に飲み込まれないように、しれっと返す。
「だったら?」
「だったら行かせねー。会員制のバーまで行きやがって……今すぐやめろ」
「健人には関係ないでしょ」
「お前が俺のせいだって言ったんだろ。まあ、俺のせいだろうが、そうじゃなかろうが、明とは長いことやってきたからな。俺がやめさせる」
「なんで? 放っておいてよ。それにその髪とピアス……」
どうしたの。
そう健人に聞こうとした時、二人の間に割って入ってくる人物が現れる。
「アキラ!? アキラじゃん、久しぶり! 会うとは思わなかったなーっ! でも、会いたいと思ってたから、会えてめちゃくちゃ嬉しい!」
「えっと……」
お洒落な服装をした、少し香水がキツめの男だ。
正直、思い出せない。日々、明はその日限定で色んな男を釣ってきた。もはや思い出せる人なんて、片手の本数を超えれば十分なくらいだ。
明がどう声をかけるべきか迷っていると、男は苦笑して。
「えー、嘘でしょ。忘れた? この前に会ったでしょ? ケイトだよ」
「あ、ああ……ケイトか。ごめんね、名前を聞いて思い出した」
本当は、名前を聞いても誰だかわからないけれど。
ケイトという男は馴れ馴れしく明と肩を組み、健人の存在に気づくと、余裕の笑みを浮かべた。
「誰? アキラの連れ?」
「あ?」
上から目線の態度に、健人は苛立った声をあげる。明と会ってからそうだったが、今日はだいぶ殺気立っている様子。下手すると、ここで喧嘩になりかねないガン飛ばし方だった。
まずい。しかも、ここは会員制のバーである。問題は起こしたくない。
「さあ? 知らない人だよ。早く行こ?」
慌てた明はケイトの服を引っ張り、急いでバーの中へ入った。健人はここの会員になっていないらしく、入ってからは追いかけてこない。ホッと安堵してケイトに微笑むと、一緒に店の奥へと進んだ。
それにしても、今まで気配を見せなかった健人がなぜ急に現れたのだろう。偶然にも、バーへ行くのを再開させる日に会うなんて、ついていない。あの髪とピアスも、どうして。
もしケイトが現れなければ、どうなっていただろうか。また凛のことを出してくるだろうか。気持ちも一方的に押しつけたまま逃げてしまったし、やはり会うと気まずい。
酒を飲みながら、明の頭の中は健人のことでいっぱいになっていた。それはケイトと会話が成り立たないほどで。
「アキラ? 大丈夫?」
「え? ああ……うん。大丈夫」
ぼーっと健人のことを考えて、何回かケイトに心配される。
「ごめんね、ちょっと酔っちゃったかも」
さすがに怪しまれるかもしれないと、明は言い訳に嘘をついた。
すると、カウンターに置いてあった明の手にケイトの手がそっと重なって。すり、といやらしく撫でられると、耳に甘い囁きが入ってくる。
「じゃあ、休憩でホテルに移動しようか……せっかく会えたんだしさ、今夜もいいでしょ? 色んなことシよ……?」
「一回きりって言った……もういいや。うん、わかった……今日は特別ね」
今から他の男を捕まえるのは面倒くさかった。気分的に手っ取り早く済ませたい。
明も同じように甘く囁くと、移動するためにバーをあとにした。
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