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◎試練(しれん)
・信仰・決心のかたさや実力などを厳しくためすこと。また、その時に受ける苦難。
◎正念場(しょうねんば)
・真価を表すべき最も大事なところ。ここぞという大切な場面。
◎悟り(さとり)
・心の迷いが解けて、真理を会得する。
◎キス
・接吻(せっぷん)のこと。相手の唇やほおなどに自分の唇をつけ、愛情や尊敬の気持ちなどを表すこと。くちづけ。
「お父さんとキスしてみたい」
一瞬極楽の淵が見えた気がした。
*
こう太は何故か大量のおかずをもらって綾凪くん家から帰ってきた。
申し訳ないと思う反面、料理上手と言われている綾凪くんの手料理に嬉しくなる。
唐揚げとかポテトサラダとか俺の好きなものが多くて、早く飯にしようぜと促すと、こう太の反応が鈍い。
「こう太?」
「あ…、ごめん。ボーッとしてた。ご飯あっためるから待っててね」
そう言うと冷蔵庫に向かって歩いて行った。
綾凪くんの家から帰ってきてから、なんとなくこう太の様子がおかしい。
落ち込んでいたり元気がないというわけじゃないんだけど、何やら考え込んでいる。
その姿に以前の自分が重なり、こう太はこんなもどかしい気持ちだったのかと反省する。
綾凪くん家で何かあったのだろうか。
綾凪くんはともかく、あの金金頭に何かされたのか?
あのクソガキ。
今度見かけたら蹴り飛ばしてやる。
そんなことを考えていると、風呂も済ませパジャマ姿になったこう太が寝るね、と声をかけてきた。
「おう、おやすみ」
「おやすみなさい」
そう言ったものの、やっぱり何やら難しい顔で考え込んでいた。
そのうち何やら決めたのか、晩酌している俺の隣に座ると姿勢正しく正座した。
ジッと、青い瞳で俺を真剣に見つめてくるので、なんとなくその気迫に押される。
「お願いがあるんだ」
「な、なんだよ」
「お父さんとキスしてみたい」
頭がパーンとなって、綺麗な極楽が見えて、その極楽を背景に頭の周りをパンダ達が「キース!」「キース!」と言いながらグルグル回っていた。
そんな俺をお釈迦様が見下ろしていた。
[石川よ、ここが正念場ですよ。この試練を乗り越えてこそ、悟りが開けるのです]と。
俺は努めて冷静に、いつものような感じで笑い飛ばしてやった。
「何言ってんだお前。キスってのは、好きな人とするもんだぞ?」
「知ってるよ。だから、お父さんとならできるんじゃないか」
「お…おう、そうか」
ピギャー!この子何言ってんだよおい!!
俺のこと好きってことじゃん!
やめて!お釈迦様が見てる!!
「で、でもよ、可愛い女の子ならともかく、こんなクマみたいな親父で良いのかよ?」
「良いんだってば!ちょっと目、瞑ってよ!」
早く、と急かされて俺は目を閉じるしかなかった。
こう太の息を呑む音が聞こえて、石鹸の匂いがする。
それが近づいてきたと思うと、唇に柔らかいものがちょっと触れてすぐ離れた。
「…どうよ?」
俺が尋ねると、こう太は納得がいかないような顔をして首をかしげる。
俺の方は心臓がバクバクして今にも口から飛び出そうだった。
でも、自重した俺偉い。
頭をポンポンと撫でてから、さっさと寝ちまえと促すと。
「…今度はお父さんからキスしてよ」
…Pardon?
パンダ達がプラカードを持って走り回っている。
そして、お釈迦様が俺の頭をピターンピターンと叩いている。
こう太は俺の胸中の葛藤を知らずに目を静かに閉じると、唇をこちらに突き出す。
アヒル口が何だか可愛い。
いや、可愛いとか言っている場合じゃねぇぇぇ!!
アカン!!これアカン奴や!!
「…早く!」
こう太はグズグズしている俺に痺れを切らしたのか、目を開けて睨みつけながら冷たく言い放つ。
何?なんでこの子無茶苦茶なの?俺の子だから?
泣きたくなる俺を無視して、こう太は正座のままちょっと距離を縮める。
そうして俺の服の裾を握ると、俺がしやすいようにちょっと顔を上にあげてくれて。
理性がブチーンと切れた。
以前、保村が言っていた。
小五、ロリと書いて、悟りになるって。
ロリというのはロリコンの略で、小さい女の子を指す。
じゃあ、小さい男の子は?って尋ねると、ショタコンというらしい。
何が言いたいかというと。
小五、ショタじゃ悟りは開けないってことで。
俺はこう太の頭を掴むと、その唇に貪り付いた。
突然のことにこう太が動揺するも、気にせず唇をこじ開ける。
片手で頭を支えながら、もう片方の手で腰を引き寄せて密着させると、こう太は俺の胸板をドンドンと叩いて抗議する。
それを無視して俺はこう太の舌に自分の舌を絡ませる。
何度も何度も角度を変えて、ひたすらこう太と唇を合わせた。
頭ん中が陶酔してきて、何だか全てがどうでもよくなりそうだった。
とりあえず気の済むまでキスをしてから離れると、こう太は涙目で顔を真っ赤にしながら震えていた。
やっべ、と思っていると。
「調子にのるな!!」
こう太は強めに俺の頭を叩くと自分の部屋に行ってしまった。
残された俺は一人罪悪感を抱え、床と同化するってくらいにうつ伏せになっては一人落ち込んでいたのだった。
「お父さん」
体を揺り動かされた振動で、俺は目を覚ます。
いつの間に眠っていたらしく、カーテンから光が漏れていた。
すでに着替えたこう太が、申し訳なさそうに俺を見下ろしていた。
「おはよう…」
「お、おう、おはよう」
なんとなく気まずい空気が流れる。
先に口を開いたのはこう太だった。
どことなくションボリした感じで、俺を遠慮がちに見つめてくる。
「昨日は、ごめんなさい…。ボクからお願いしたのに…叩いて」
「いや、父ちゃんこそ。すげー嫌なことしちまって、ホントごめんな」
俺の言葉にちょっと驚いた顔をすると、顔を真っ赤にそめて俯いてしまった。
そうして小さく、ボソボソっと何やら呟いた。
「…から困ってるんだ」
「ん?」
「嫌じゃなかったから困ってるんだ…」
そこからの記憶が
ない
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