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鍋の美味い季節になって本当に嬉しい。
12月ということでスタッフのみんなや、仕事で知り合った人、華田達と忘年会という名目では飲みに出歩いている。
まぁ、俺は飲まないから食ってるばかりなんだけどな。
森崎くんに「こう太くん怒ったりしないんですか?」と尋ねられたんだけど、こう太は未だにお弁当効果で俺にメロメロだ。
だから、気持ちよく送り出してくれている間に行けるだけ行くと答えたら呆れられた。
多分あんまり寂しがっている様子がないのは、小学校が冬休みになったらずーっとイチャイチャしようねとこう太と約束してあるからだと思う。
ちなみに、大体社会科見学の日から二週間は経っている。だけど、相変わらずこう太は俺にくっついてはニコニコしている。俺もそんなこう太に顔緩みっぱなしなんだけど、こう太の熱が冷めてまたいつものツンに戻ったらすごい反動がくるんじゃないかと思うと、今から怖い。
「さみぃ~」
「おう。食後の運動とか言ってねぇでタクシー呼べば良かったな」
居酒屋からマンションまでの道をバイトの終わった聖斗と肩を並べて歩く。
お互いに無視して帰ってもよかったのだけど、不本意にも目が合ってしまったのでなんとなく帰る流れとなった。
「お前最近バイトばっかだな。俺が店行くと必ずいるよな」
「クリスマスに無理矢理休み入れたからな。その分、ほとんどバイトだ」
「へぇ。クリスマスだから七瀬くんとデートでもすんのか?」
「いや。その日オレの誕生日だから家で祝ってくれるみたいで…」
誕生日と自分で言ってから聖斗の顔が「やべ」っという顔になる。
俺の方を恐る恐る顔を向けてくる。別に俺は何も発言してねぇのに。
「あんだよ?」
「おっさんも笑う気だろ!?『ホーリーナイトに生まれたから聖斗なんだね』って!!」
「はぁ?いや、それだったら聖夜だろ?つーか、別に笑うとこねぇだろ。何だよ?誰かに笑われたのか?」
「こう太」
「ほんと、うちの息子がすみません。あとで、よーく言って聞かせますので」
ペコペコ謝る俺に、聖斗は「まぁ、よく言われるからいいんだけどな」とため息をついた。
聞いてみるとそんなに大笑いってわけじゃなくて、ちょっと微笑むくらいの「フフ」くらいだというから、別に聖斗も怒っているわけじゃないみたいだ。
ただ、誕生日が近づくと名前の聖の字を弄られるから、地味に過敏になっているらしい。
「そういや、クリスマスか。プレゼント何あげるかな」
「オレは兄ちゃんに新しいキッチン用品あげるんだー♪」
「え?お前、その日誕生日じゃんか」
「それはそれ、これはこれ」
ルンルンしながら歩く聖斗がマフラーをバサっとした時、左手の光る指輪が目に入る。
ゴツめのリングをつけている他の指に比べると、明らかに細いシンプルなリングはどことなく異様だ。
そしてどっかで見たことあるなぁ、と思ったら七瀬くんも右手に同じのをしていたのを思い出す。
「その薬指のって七瀬くんとペア?」
「そう♪兄ちゃんの誕生日に贈ったやつ。でな、兄ちゃんは恥ずかしがって右手にしかつけてくれねぇんだよ。その右手を左手に指輪をはめたオレが握ることによってだな…」
何やらノロケ?だした聖斗の話をスルーして、俺はこう太へのクリスマスプレゼントを考える。
一回、こう太にクリスマスに欲しいものないか?って聞いたところ、
「また、お父さんがおにぎり作ってくれるだけでいいよ(はーと)」
という、何とも安上がりな答えが返ってきた。
それはそれでしてやろうと思うんだけど、消耗品じゃなくて何か固形物を渡したい。
もう少し欲張るとお揃いのもの。
…こう太がもう少し大人なら、思い切って指輪とかもありかもしれないけど如何せん小学生だし。
というか。こう太は早く大きくなりてぇみたいだけれど、俺としてはもっとゆっくり大きくなってほしい。
もっともっと長い時間、抱っこしやすい可愛いサイズでいてくれればいいのに。
だけど、ちょっと離れていただけで何となく大きくなっているような気がする。
こう太の成長を見られる反面、やっぱりどっか寂しいような気がする。
*
そんなことを考えている間にもクリスマスはどんどん近づいていく。
アトリエの行き帰りで何が良いだろうと考えるも、良い考えはちっとも浮かんでこなかった。
「だだいまー」
「おかえりなさーい」
玄関を開けるとすぐさまこう太の嬉しそうな笑顔が出迎えてくれる。
奥からはいい匂いが漂ってきて、思わず腹が鳴った。
こう太はニコニコしながら俺の腕にくっつくと「寒いから白菜と豚肉のお鍋にしたよ」と夕飯の内容を教えてくれた。
腕にこう太を引っ付けたままリビングに入ると、暖かい風がエアコンから流れて来てすぐさま頬にあたり、部屋の暖かさに安心する。
「すぐご飯にするね。待っててね」
「すげーいい匂い、腹減ったなぁ。そういや最近、こう太レパートリー増えたよな」
「そうかなぁ。…お父さん、手冷たい」
「おう、外むちゃくちゃ寒かったからな」
こう太は俺の掌をとると、冷たいだろうに自分の頬に触れさせた。ちょっと申し訳ないんだけど、こう太の頬の暖かさが心地よかった。
それから俺の手を両手で包むと、自分の掌の暖かさで温めようとしてくれる。室内にいたせいなのか、それとも子供特有の体温の高さのせいなのか、包んでくれる両手はポカポカと暖かかった。
「冷たいだろ?」って俺が尋ねるとこう太は笑顔のまま首を横に振った。
「お父さんが風邪ひいちゃう方がやだもん」って。
あかん。可愛い。
「もういいよ、ありがとな。ちょっと下だけ着替えてくるわ」
「うん。お鍋あっためるね」
こう太は名残惜しそうに手を離してから、俺は自分の部屋に一旦戻った。
夕飯食い終わってから、こう太を膝の上に乗せて今日あったことを色々話したり、単純にいちゃついて時間を過ごす。
やっぱり未だこう太は弁当効果でもの凄く機嫌がいい。
自分から膝の上に座っていい?とか、ギューッとして欲しいって甘えてきたり、俺のこと「大好き」ってとろけそうな笑顔で言ってくる。弁当すげぇ。
で、俺が尻触ったりとセクハラしても頭叩いたり怒ったりしない。恥ずかしがるくらいなんだけど、それがまた可愛いからついいじめたくなってしまう。
もうちょっとエッチなことしたらどうなるかな?と思って、うるさいテレビを消してキスしようと思った時だ。
CMで紹介している商品に一瞬目を奪われた。
何かを掴めそうな気がして、思わず食い入るように見ていたらこう太の不思議そうな顔が視界の端に映る。
それで、ふ、とこう太の方に顔を向けた瞬間、プレゼントを思いついた。
「よっしゃきた!!」
「へぇ?」
「これで勝てる!!」
「な?何?どうしたの?」
俺は小さく口を開けたこう太の後頭部を掌で支えると、何にも言わないで唇を重ねた。
「クリスマス覚悟しとけよ」
そう言ってニヤっと笑うと、こう太はポカーンと口を開けていた。
多分、前のこう太なら「は?何言ってんのさ?」みたいに返されていたと思う。
だけど弁当効果が付属されたこう太は。
「変なお父さん」
って、笑うだけだった。
すごく可愛い反面、やっぱり弁当効果が無くなってからの反動が怖いと思った。
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