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ふたりのカタチ #8
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イベントは相当大がかりらしい。
おいらが挿絵を描かせてもらってる探偵小説があるんだけど、
それが今度映画化するらしくって。
それに連動して、おいらのキャラがいろんなCMとタイアップする。
ビールやアイス、チョコレート。
家電と、あと期間限定で車もって言ってたかな?
さらに驚いたことに、カズがゲームも作ってるらしい。
カズ、そんなこと、一言も言ってなかったのに。
で、公開直前に大きなイベントを開くから、
それに合わせて、絵が数枚欲しいって。
CMはおいらのキャラがアニメーションで動くのと、
役者さんが演じる2パターン作られるらしい。
役者さんの名前を聞いて驚いた。
元々、深夜のドラマだったから、メインのキャスティングはそのままらしいんだけど、
今をときめくアイドルグループが全員で出演。
それだけでも売れるの間違いないから、おいらもあんまり気張らずできそう。
「……と、大まかにこんな感じですけど、どうですか?」
類さんはテキパキと説明してくれる。
修君に匹敵する、できる男って感じ。
「わかりました。じゃ、小野寺さんが描くのは、これとこれと……。
アニメーションの方は?」
「デザインが出来上がりましたら、お持ちしますので、見てもらえたら。」
「わかりました。後は、スケジュールですが……。」
できる男、田村さんもパキパキとこなしていく。
おいらは二人のやりとりを聞きながら、コーヒーを飲む。
できる男ばっかりだから、安心だね。
「智さんからは何かありますか?」
急に振られてびっくりする。
聞いてなかったわけじゃないんだけど、こういうのはほぼ田村さんに任せっぱなしだから。
「いえ、特には……。」
「最後のイベントには、智さんにも出席してもらいますので、覚えておいてください。」
「えっ?おいらは……。」
そういう、人前に出るの、苦手なんだけど……。
「智さんのキャラも、すごく人気なんですから、
生みの親として、当然来てもらわないと。
なかなかメディアに登場してくれないから、それだけでも話題になりますし。」
「は、はぁ……。」
なんか……おいらにできるかな?
不安そうなおいらに気づいて、田村さんが背中をポンポン叩く。
「大丈夫。イベントには西沢さんも来るし、あのアイドルグループに生で会えるんだよ。
女の子だったら失神ものだよ。」
「うん……。」
おいらの口が尖ってるのを見て、田村さんが、しょうがないなぁと笑う。
「では、そろそろ食事にしますか。」
類さんが、お店の人に声を掛けに行く。
すかさず、田村さんが小声でおいらに言う。
「花沢さん、気を付けて。」
「ん?」
おいらが首を傾げると、田村さんが意地悪そうな笑いを浮かべる。
「絶対、気に入ってる。」
「……おいらのこと?」
「そう。」
「よかったぁ。」
「よかった?」
「うん。これから一緒にお仕事するのに、気に入られなかったら困る。」
田村さんは渋い顔をする。
「必要以上に気に入られても困るけどね。」
「そんなことないよ。」
おいらはクスッと笑う。
田村さんにも修君の心配性がうつった?
「取りあえず、斉藤さんにはギリギリまで気づかれない方がいい。」
「……うん。」
そうだね。
元お隣さんだって知ったら、打ち合わせの度、一緒に来るって言いそう。
それじゃ、修君の会社にも迷惑かけちゃう。
これ以上、修君の会社に迷惑かけるわけにいかないもんね。
おいら達は顔を見合わせて頷いた。
食事はとても美味しくて、小食のおいらでも、ずいぶん食べれた。
それと一緒にお酒も進んで、おいら、とっても上機嫌。
「いやぁ、しかし、まさかお隣さんが小野寺智だなんて、驚いたよ。
「んふふ。おいらも。」
「ずいぶん、色っぽい男だなぁって思ってたけど。」
類さんが、にっこり笑う。
類さんは修君やジュン君とはタイプの違うイケメンで、
優しそうな柔らかい雰囲気で、ふんわり包み込んでくれる感じ。
なのに、仕事になるとパキパキとこなす。
これは……奥さんもいろいろ心配になっちゃうね。
「花沢さんも、モテるでしょう?」
田村さんは、お酒を飲みながら、お刺身を摘まむ。
「そうでもないですよ。既婚者ですし。」
類さんは華やかな笑顔で田村さんを見る。
「いやぁ、そんなことないでしょう。顔もいいし、スタイルもいい。
モテないわけない。」
「そんなことないですよ。」
類さんが、おいらにむかって笑いかける。
おいらも笑顔で返す。
あ、おいら、類さんの笑顔、好きだなぁって、そう思った時、携帯が鳴る。
チラッと見ると、修君の文字。
田村さんは苦笑いして、行っておいでと顎をしゃくる。
おいらは小さく頷いて、席を立つ。
「すみません、ちょっと……。」
「あぁ、あのイケメンの彼氏?」
おいらが何と言おうか困っていると、
「心配で仕方ないんだね。仕方ないか。こんなに可愛いんじゃ。」
そう言って、ビールをゴクリと飲んだ。
ビールを飲むときの上目遣いの視線に……なぜだかドキッとして、
おいらは急いで部屋の外に出た。
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