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印刷所の帰り道
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(一部変更箇所があります)
「桜ヶ丘高校の子だね。今年は凄い企画を考えたんだって?」
印刷所に持っていくと、担当の人の指示で少し修正を加えることになった。
それから、印刷数、完成品の輸送先、料金の支払い方法を話し合う。
「はい。これが僕らの合宿費用になるので」
僕がそう言うと、印刷所の職員さんは感嘆の溜息をついた。
「凄いよね。完成作は、出版社も顔負けだと思うよ」
職員さんは笑みを見せた。
それを受けて、僕らは頭を下げる。
「今年もよろしくお願いします!」
1時間ほどで僕たちは印刷所を出た。
と言っても、これは全て通年通り。
ほとんど、僕も先人の先輩方のマニュアル通りに動いている。
ただ。
今年の発行部数は、前回より2割増しで注文をしておいた。
これは部長の提案。
理由として、業界通であるアキラ先輩の知名度と、BL写真集の集客を狙ってのこと。
昨晩ホームページで確認したところ、写真集の購入予約は例年より格段に多かった。
「そういや、あの写真無かったですね」
島くんが何か思い出したかのように口を開く。
「あの写真?」
「ほら、屋上での」
一瞬思い出せなかった。
が、数秒してからじわじわと脳裏に蘇る。
僕は島くんと、あの場でキスをしたんだ。
「編集した時から、あの写真無くなってました」
確かに、そういえばそうだ。
レンからは何も言われてないけど。
花見の席で確認した時は、まだあった。
あの後に、例の写真が抜き取られたのだろう。
…どうして。
彼は何を思って消したのだろう。
最近はレンが絡むと、それだけで気が張ってしまう。
「そんなに好きなら言っちゃえばいいのに」
島くんが僕の心を読んでそう言った。
一瞬ぎょっとしたが、僕はいつも通り返事する。
「出来ないよ…」
「泉先輩も嬉しい満更じゃないと思うんですけどね」
僕は黙り込んでしまった。
なんて返せばいいかも分からない。
僕はレンが好き。
今の距離感がむず痒くて、心地いい。
だけど、僕が一歩近づけば離れてしまうかもしれない。
それだけは絶対に避けたいから……。
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