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ー真白なユキー
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ずっと悩んでいた
燕羽の笑顔を見るたびにココロが何度もぐらついた
こいつを連れて行ってもいいのかと何度も自分に問いかけた
壁に掛かっている雪景色の絵画
こんな所が本当に存在するのだろうか?
どの絵も綺麗な夢のような景色
存在しても俺は、こいつを殺す事が出来るのか?
俺の我儘でこいつの一生を台無しにしてしまってもいいのか?
もし、誰かに見つかって今以上の苦しみを与える事になってしまったら?
どうしようもないな俺
やはり卑怯な死を自分自身まだ受け入れられていないようだ
生への執着はない
でも、怖い
先が見えない世界へ行くのだから当然だ
眠れないまま眠剤を見つめ、燕羽の飲んでいたペットボトルに何度入れようとしたかわからない
目が覚めて水を飲んで眠っている隙に・・・・・と、何度考えた事か
でもね・・・・
俺も本当は怖いんだ
やり直すことも出来ない
死ぬのも怖い
どうしようもない人間なんだ
結局、そのまま朝になり燕羽が目を覚ました
俺は複雑な心境で名前を呼んだ
この感覚は何だろう
皮膚が熱を持ったような感覚で頬がヒリヒリする
瞬きも出来ない
燕羽はその意味を理解出来ているようだった
でも・・・・俺はまだ悩んでいた
やはりこいつを連れて行く事は・・・・・
でも、俺の気持ちとは裏腹にこいつの決心は固かった
決心と言うのかはわからない
何も出来ない17のガキの考えだしね
俺もそう
死ねば全てがチャラになると考えているただのクソガキだ
世の中の仕組みすらわからない
世の中に溶けこもうともしない
罪を償おうともしない
全て甘いだけのクソガキだ
死ぬと言う事で人生をリタイヤしようとしているんだからどうしようもない
でも、今更人生をやり直す気にもなれない
本当にこいつの事を愛しているのならそうするべきだとも考えた
生きたくても生きられない奴らもいる
命が与えられる物ならば、喜んで差し出すよ
最後ぐらいいい事をしたいしね
でも、出来ないんだ・・・・・命の重みはそんなに簡単に売り買い出来るものじゃない
でもね・・・・・ここまで黒く染まった俺はもう白にはなれない
こいつの気持ちもわかるから辛い
誰もいない場所で暮らせたらどんなに幸せか・・・・なんて夢物語を考えたりしてね
でも、目の前の現実からは逃れられない
どこへ逃げても同じ
幸せにはなれない
愛しているから連れて行く
俺は一番ずるい選択をした
本当は一人が堪らなく寂しい
死のうと思えばいつでも死ねた
でも、こいつがいるから・・・・・・・と言う理由を何度こじつけた事か
そして俺達は最期の場所までやって来た
もう迷いは無い
迷っても仕方が無い
だって、もう帰り道すらわからないところまでやって来てしまったんだから
二人で座り、どんよりした空を見つめていた
絵画のような場所ではないけど、綺麗な場所だった
真白な雪と白樺の木
吐く息が白い
ましろなけしき
本当にこんな場所が存在した
俺は黙って薬と酒を燕羽に渡した
俺は不眠症だから多めに飲む必要があるだろう
そしてしばらく見つめあい、微笑みながら薬を飲み干した
着ていたジャケットを脱ぐととても寒くて体が震えた
寒くて寒くて・・・・・・やはり簡単に出来る安楽死なんてあるはずもなく、ただガタガタと震えるしかなかった
しっかり繋いだ手はまだ温かい
生きている証拠だ
俺達は小さな声で話をしていた
辺りはもう薄暗く、星は残念ながら見えなかった
「ごめんね・・・・・俺が巻き込む形になってしまって・・・・・ほんとうにごめん」
「ううん・・・・俺はすごく幸せだよ・・・・・・もし最期の願いが叶うのならば・・・・・このまま誰にも見つからなければいいなんて思っているんだ」
「俺もだ・・・・・・生き返りたくはないな・・・・・・生き返れば本当の地獄だろうしね」
「・・・・・・・・・・・やめようよ・・・・最期ぐらい楽しい話を」
「そうだな・・・・・・・・遊園地楽しかったな」
「うん・・・・・すごく楽しかった・・・・・初めてだったから嬉しかった」
「俺も・・・・・・」
震えながら話をした
いろんな話をした
寒さで震えてうまく言葉が出ないけど
言いたい事は全部伝わる
俺の人生ってほんとゴミのような人生だったな
でも、唯一こいつと知り合えた事で俺がほんの少し人間らしくなれたのかもね
「燕羽・・・・・・愛してるよ・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・うん、俺も・・・・・あい・・・・し・・・・」
「燕羽?おい・・・・・」
少し寒さを感じなくなった
でも手の感覚はまだ残っている
「・・・・・・・・・・・・・・声を・・・・聞かせてくれ・・・・」
燕羽は俺にもたれ掛かるようにして目を閉じていた
悲しくて辛くて・・・・・もう一度声が聞きたくて・・・・・
「ばーか!先に逝くなよ・・・・・俺は薬が効かないんだぞ」
繋いでいた手から温もりが消えて行く
俺が最期に残せる言葉は懺悔しかない
燕羽・・・・・ごめんね
「燕羽・・・・・・ごめんっ・・・・・・・」
今叩き起こせばまだ間に合うのか?
本当にいいのか?
でも、起こしたところで違う恐怖が待っているんだ
すごく勝手な考えだけどこのまま寝かせてあげよう
「星・・・・見えなかったな・・・・・・・」
燕羽の体を抱きしめながら語りかけていた
寒さはもう余り感じない
早く燕羽を追いかけたい
どうせあいつはまた迷子になっているに違いないから
「お前はさ・・・・・俺と・・・・・・・知り合えて・・・・・・・幸せだ・・・・っ・・・たかな」
これが幸せなんだよね?
今のこの瞬間が・・・・・・・幸せなんだよね?
マシロなユキは
俺達の罪を
覆い隠してくれるだろうか
オネガイダカラ
迷子で泣いている燕羽に
会わせて下さい
それだけで
いいんです
「眠い・・・・・」
やっと・・・・・・・・・
お前を追いかけられるみたいだよ・・・・・・・・・・・
ー完結ー
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