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ーユキー
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少しだるさの残る朝、目が覚めた
眠っているはずなのに眠れていない感じ
ここ数日、たくさんの夢ばかり見ている
でも、楽しい夢ではない
怖い夢ばかり
全部夢だったらどんなに幸せかと何度考えた事か
でも、夢ではない、目覚めている今が現実
爆睡出来るのは、何度もイカされた後の疲れきった数分間
でも、すぐに目が覚めてしまう
「おはよ」
「おはよう」
翔は先に起きていた
また眠れなかったのかな
煙草を吸いながら初めて入ったホテルの壁に掛かっていた雪景色に似た絵画を見つめていた
「燕羽・・・・・」
「うん」
その先は何も聞かなくてもわかっていた
俺は翔の体を抱きしめて泣いた
悲しいからじゃない
でも、すごく泣きたかった
「お前は・・・・」
「嫌だ!ごめんね、泣いたりして・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「俺にもよくわからないんだ・・・・・どうして涙が出るのか」
「俺って最低だよね」
「どうして?」
「普通なら愛する人は絶対死なせたりしない」
「でも、残された人は悲しいよ」
「だけど、新しい出会いも」
「もう止めて!俺はそんな出会いはいらないし翔と一緒に行くんだ」
「・・・・・・・・・・・・・俺さ、ホントはまだ悩んでる」
「えっ?」
「お前を連れて行きたくはない」
「翔」
「昨日、お前の水に眠剤を入れて消えようと思った・・・・でも出来なかった・・・ホント、情けないよ」
「そんな事をして消えたら恨むよ?」
「でも、お前を殺したくは無い・・・・お前ならまだやり直せるんだ」
「嫌だよ!そんな事言わないで・・・・・お願い」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「翔・・・・・俺の幸せは翔といる事なんだよ?時間なんて関係ない、俺はこの数日間で一生分の思い出が出来たんだ」
「燕羽」
「もちろん死ぬのは怖いよ、どこへ行くのかわからないから怖い・・・怖くないなら死ぬなって言われるかもだけど、翔も怖いでしょ?」
「そうだな・・・・死ねるかどうかが怖いよ」
「俺達は命を自分達で消して、世間から大馬鹿野郎だと言われるかも知れないけど、逃げてもいいじゃない・・・・・何を言われても関係ないよ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「一番卑怯かも知れないけど・・・・・・迷惑もたくさんかけてしまうかもだけど・・・・グスッ」
「そうだな、せめて迷惑が掛からない場所を選ばないとな」
「うんっ・・・・・・」
そして最後に二人でお風呂に入り、薄い服を着て厚手のジャケットを羽織った
帽子をかぶりマフラーもしっかり巻きつけた
観光客だと思わせる為にね
そのまま電車に乗り、目的地を目差した
まだ雪はどこにもない
本当に雪があるのだろうかと不安になる
食事はしない事にした
余分な体力はつけないようにね
数時間電車に揺られていると、漸く雪景色が見えて来た
おかしな安心と不安
翔はぼんやり雪景色を見つめていた
ホテルで絵画を見ている時と同じ表情で・・・・・・
調べていた駅で降り、今度はバスに乗ってある場所を目差した
周りは観光客もいたけど、乗客は少ない
なるべくバレないように笑顔で会話をしていた
目的地でバスを降り、そのまま観光コースを回る事にした
体力を減らす為に
時間は午後の3時
人がまばらになって来たけどまだ早い
なるべく人と目を合わさないように楽しそうにしていた
観光客のように、駅で買ったカメラで写真をたくさん撮った
お土産も買った
周りに注意しながらハイキングコースの道を外れた
多分、誰にも見られていないはず
ロープを越えてそのままひたすら歩いた
熊とか出そうだけど、今は冬眠中だよね?
もう帰り道もわからないところまで来てしまった
あるのは枯れた木々だけ
あとは真っ白な雪
帰り道がわからなくてもいい
帰らないんだから
でも、怖い・・・・・・翔がいるけど本当は怖くて泣きそうだった
俺達は大きな木の下に座り、ぼんやり空を見つめていた
そう言えば、翔と出会う前にも空を見つめていたっけ
まだ銀杏が金色だった秋の日
綺麗な黄金の道の中、先の事もわからないまま俺は笑顔で歩いていたっけ
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