アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
⑤
-
次の日、浅海は家を出ようと玄関に行くと妻の靴が置いてあった。昨日、浅海が寝ているうちに帰ってきていたのだろう。
まるで、何もなかったみたいに平然とそこにある靴を浅海は蔑むような目で見つめた。
本当なら捨ててやりたかった。この綺麗な淡い赤のハイヒールを今すぐに燃やして消し炭にしてやりたかった。
浅海は苦虫を噛み潰したような顔をして家を出た。
空は腹が立つほど青く澄んでいた。快晴であった。空は残酷なほど広く雲一つない。私は全てをさらけ出している、何も疑うことはないよ。そう言っているようで。
浅海は軽く舌打ちをして傘を手に持った。
絶対に、裏切るに決まってるから――
ちらりと空を見上げると、空の色が少し褪せたように感じた。
朝のホームルームのため、浅海は自身が担任として受け持つクラスに向かった。
教室に入ると浅海はぞくりとした悪寒を感じた。
鋭い刺すような、殺されてしまうような、また、今にも犯されてしまうような熱情を含んだ視線を感じた。
「……ッ!」
浅海はバッと視線を送っているであろう、瀬世に視線を送った。
瀬世は未だその視線で浅海を見つめていた。目だけでわかる、微かな色気が感じられた。
「……今日は何もないから、授業までは好きにしていいぞ。瀬世、ちょっと来い」
浅海がそう言うと、瀬世は微かににやりと笑ってこちらに向かってきた。
その姿はぞくぞくするくらい、堂々としていて怖かった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
15 / 57