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新学期(14)
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「ほう……一発で神の祝福を受けたか。」
理人の痣を見つめ、呟く慧は昴に視線を向けた。
「流石、理人様にございます。」
昴が慧に微笑み返すと、満足そうに笑ってまた理人に視線を向ける。
そして暫く談笑していると、控えめな声が上がった。
「質問を、してもよろしいでしょうか。」
壁側に控えていた桜庭が小さく手を挙げる。
「なんだ。」
一番に反応したのは理人だった。
「皆様の、お名前を伺いたく……。」
「あ!忘れてた!リョーちゃん来たばっかじゃーん!」
桜庭の言葉を遮り、早速あだ名で呼ぶ鉄平。理人は流石だなと苦笑いしていた。
「んだな。わすってだっけ。(そうだな。忘れてた。)」
「リョーちゃん初対面でグワーッて曲流すんだもん!元々クラスにいたみたいだったよね!」
「鉄平、落ち着け。涼介が困っているぞ?」
興奮して、桜庭に詰め寄りながら話す鉄平を香が捕まえると、怒られた犬のようにシュンとしたオーラが放たれる。
「ごめん。つい興奮して……。」
「あ、いえ、えっと……鉄平様?」
慌てた桜庭が、今聞いて覚えた名前を呼ぶと、潤が丁度紅茶の入ったカップに口を付けているところだった。
「ブッフォ!やべ……。」
「潤汚い。」
理人は、綺麗に噴き出されたものを避けるようにソファに体育座りをして聖夜に寄りかかる。やれやれといった顔をして、昴が持っていたトーションで飛沫を拭き取ろうとするといつの間にかアリスがタオルを持って来ていた。
「昴様いけません!わたくしが拭きます!」
アリスがテーブルや床を拭いている間にも、潤は笑い続ける。
「鉄平に様なんて似合わねぇーあはは!」
「香!言ってやって!」
さっきまでシュンとしていた鉄平は居なくなり、ムッとした顔で香に助けを求める。
「はぁ、……鉄平は実家に帰れば鉄平様だ。」
「くっ……似合わねな。想像すれねもん。(似合わないな。想像出来ないもん。)」
香が真顔で事実を述べれば、今まで我慢していた吹雪も笑い出した。
「んもー!リト!」
地団駄をふみ、最後の砦である理人に助けを求める。
「……鉄平様?落ち着いてくださいませ。愛之助は、鉄平様の味方にございます。……どうだ?似ているだろう?」
愛之助は鉄平のばあやの息子で、理人達は愛之助に会うとよくからかって遊んでいた。
「似てるー!」
「理人凄いな。今度あいつの前でやってやれ。」
「そうする。……さて、俺は朝日奈理人。朝日奈家の次男で、次期カゲロウ。そこの慧は俺の叔父で今のカゲロウ、父親代わりに俺を育ててくれたと言っても過言ではない。カゲロウの話はあとでみんなにもする。……家族になるんだからな。それから、兄の煌斗は知っているだろう?お前の兄貴が執事として付いている。で、隣に座っているのが、東雲聖夜。俺の守人だ。以上。質問は?……次鉄平。」
理人は突然、自己紹介の流れを作り出した。聖夜が頭を撫でると、理人は目で何かを訴えてくるが……お腹が減ったのだろうか?聖夜は微笑みを返し、昼食の準備の段取りを頭の中で始めた。
「はい。……神木鉄平です。神之木家の分家、の、えと……。」
「末っ子だ。奏楽師だが、今は理由あって香楽師をしている。私は長田香。鉄平の守人になる。よろしくな。」
鉄平も、香に目で訴えフォローしてもらう。このクラスの楽師と守人の関係は既に出来上がっている。そんな場所に、自分がいていいのだろうか?一抹の不安が桜庭の胸を過ぎる。
「俺は早乙女潤だ。このクラスの団長をしている。ちなみに副団長は香だ。俺はそこの沖田吹雪の守人候補。早乙女家は知ってるか?」
「はい。」
「そこの長男だ。よろしく。」
「沖田吹雪です。ほんたどごさたってねで、おらのとなりさねまれ。おっかなぐねがら。(そんな所に立っていないで、俺の隣に座って休め。怖くないから。)」
「あの、えと……。」
強烈な東北訛りに、意味がわからず首を傾げあたふたしていると、吹雪にぐいっと引っ張られ、出窓ソファに座らされた。
「あはは!こいつ訛り激しいべ?俺達山ん中で育ったから標準語覚えんの一苦労だったんだよな。こいつ早々に諦めたもんだから、なーんにも覚えてねぇんだよ。」
「潤が真面目なだけだ。」
頑張って使ってみたのか、たどたどしく変なところで上がり下がりするアクセントが面白い。
「全然標準語のイントネーションじゃないし。潤もイントネーションおかしいけどね。はい次、流生、怜、アリス。腹減った。」
「はい!えと、水川流生です!よろしくお願いします!」
「……佐々木怜。」
「わたくしは、前園アリスです。よろしくお願いいたします。」
「改まして、これからよろしくお願いいたします!」
桜庭が頭を下げ、顔を上げた時の視線は皆暖かかった。
このクラスに来て、最初に思ったのは暖かいただそれだけだった。
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