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仕事のことは色々と不安が残るが、僕たちは旅行へ出発した。紅葉の時期は高速道路が混むからと樹さんがロマンスカーのチケットを予約してくれていた。
「車でも良かったけどたまには良いだろ?旅行気分が増すしな。」
「樹さん、旅館どんな所か楽しみです。でもこんなに奮発させてしまって良かったんですか‥ごめんなさい。」
ふわっと頭を撫でられる。
だ、誰も見てない‥かな?混雑してざわざわしてる車両で誰も僕たちを知らないし気にしてないか‥。会社に樹さんとのことがバレて以来、気にしないように努めてもやはり気を張ってしまう日々が続いていた。こうやって外へ連れ出してくれるのも誕生日だからというのもあるだろうが僕の休息を図る為だということも察していた。
「ごめんじゃないだろ、要。そういう時はな、ありがとうって言うんだよ。要は甘えるのが下手だな。もっと我儘を言って甘えていいんだ。付き合って初めての誕生日だろ。特別な思い出にしたい。」
「はい‥。樹さん、どうもありがとう。でもっ、来年からは普通のお誕生日で大丈夫ですよ。樹さんがいて、一緒にケーキ食べられたら充分!」
要の膝に樹さんが脱いだカーディガンをかけてくれ、その下で手を繋ぐ。その手のひらから要への愛情がとくとくと流れ込むよう感じ、ただこの幸せを噛みしめる。
「ケーキもいいな。でもせっかく祝日で毎年休みだしなぁ。旅行に連れて行ってやれるくらいは給料のほうでも貰ってるんだが。甘えられない?」
「はい‥‥。僕ほんとに嬉しいです。こんなに幸せな誕生日今までにないです。」
顔を赤くしてそう伝えると、
「まだ旅行は始まったばかりだよ。少し寝とくか?チェックインまでに連れて行きたい場所があるんだ。」
「うん‥じゃあ少しだけ。樹さんも寝る?僕の肩で寝られる?」
「はははっ。可愛いけどちょっと無理かな。首が痛くなりそうだ。俺は仕事のメールを返信したいんだ。せっかくの旅行なのに悪い。メールだけだから。」
本当は連休だし接待のゴルフがあったの断ってくれたんだよね。仕事用のiPadに向き合う樹さんを見ながらうとうとと眠ってしまった。
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