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それから俺たちは明日は一番忙しい日曜日だということを忘れて、時間も気にせずにいろんな話をした。好きな食べ物、嫌いな食べ物、好きな色、特技、趣味。プロフィールシートに載っているような、典型的なことだけど1つずつ凪のことを知っていくことが嬉しかった。
ただ1つ、恋人だったら一番に知りたいことをこのお坊ちゃまは中々教えてくれない。俺のを教えたのに、自分だけ教えないなんてふざけんな。
「いい加減教えろっつってんだろ」
「だ~か~ら~、誕生日を人に言いたくないんです~」
「お前はバカなのか?人に言いたくないのはどうであれ、恋人の俺には言わなくちゃいけねーの!」
「それは狐塚さんルールでしょ~」
「俺の言うことには逆らうなって何回言えば分かんだよ」
「恋人というのは対等な関係でこそ成り立つものであって、力関係が傾いてたらいけないと思いま~す」
こんな時だけ恋人だとはっきり認めやがって。不覚にも嬉しいと思っちまったじゃねーか。だからって諦めたりしねーけど。
「なんか誕生日に嫌な思い出でもあんのか?」
「そんなものもないで~す。強いて言うなら、興味がないですねぇ」
「…これから俺が毎年祝って、そんなこと言えなくさせてやるから覚悟しとけよ」
「っ…出来るものなら、やってみて下さいよ」
顔を伏せながら、消え入りそうな声でぽつんとそう言った凪。こいつはまだ俺と恋人になったばかりだから、未来のことを想像出来ないんだと。信じられないんだと、この時の俺はそう思っていた。
本気で言っていた俺の言葉の数々を、凪はどんな気持ちで受け止めていたんだろう。元気づけようと、前を向かせようとかけていたつもりの言葉が、凪を傷付けるものでしかなったんだ。
「凪ー?俺もきちんと自分の誕生日言っただろ。だからこれから毎年2月8日は祝ってくれよな」
「……」
「そこで黙られたらさすがの俺も傷つくわ」
「…10月11日」
「え」
「俺の誕生日」
「凪…!やっと言ったかちきしょう!10月11日な、もう一生忘れねーわ」
ずっと忘れない。お前が生まれた日。
お前が―――……。
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