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第8話
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王様がお城を出ていく日になりました。
多くの国民が沿道に並び口々に
どうかお元気で、どうかまた戻ってきてください
と呼びかけました。
王様は馬車の中で小さくうずくまっていました。
「或る人」は王様がお城をでてから少ししてお城に入りました。街の人々は新たな王である「或る人」を決して歓迎しませんでした。なぜなら国民は「或る人」が今まで国民に対して冷酷な態度だったことを知っていましたし、大臣達が王様は「或る人」に追い出されたのだと国民に伝えていたからです。
最初に「或る人」は周囲の貴族達の言う通りに、自分が王になるのに反対した3人の大臣達をクビにしました。また、国民に税金をたくさん課しました。
貴族達は毎日遊んで暮らし、国民はどんどん貧しくなりました。王様の頃のような施しはなくなりました。貴族絶対の時代となったのです。貴族達に冷たく扱われて耐えられなくなった将軍達は次々と辞めていきました。しかし周囲の貴族達は「或る人」に外のことは一切教えず、また外には「或る人」が全て指示したことだと言いました。国民はますます「或る人」を嫌いました。
しかし「或る人」の暮らしは全く変わってはいませんでした。「或る人」は初めて伯爵になり王様に貴族の暮らしというのはどういうものか教わった時から収入も暮らしぶりも、家庭環境も、全て変わっていなかったのです。
そう、全て「或る人」の周りの貴族達の嘘だったのです。貴族達は自分達が儲かるため、偉くなるために「或る人」を利用していたのです。王様に嘘の報告を上げたのも「或る人」により強く執着させるためだったのです。彼らは「或る人」が国民に対して、王様と同じく施しをするときに、新国王になる前からずっと、その施し用のお金や食料を着服していたのです。大臣達を買収したのも、貴族達でした。外国から仮国王が来たら、これまでのことがバレてしまうと危惧したのです。泣く奴は気持ち悪いと言ったという話も貴族達の嘘でした。彼らは冗談半分で言ってみたのです。王様がどう受け取るかも考えずに。
「或る人」が王様に痩せるように言ったり笑顔が気持ち悪いと言ったこと、王様を見ると逃げていたのは本当でした。
しかし、それは「或る人」が王様のことを王様が「或る人」を愛するのと同じくらい愛していたからです。
痩せるように言ったのは王様が本当に本気で愛してくれているのかわからなかったから、
笑顔が気持ち悪いと言ったのは王様が誰にでも笑顔を向けてしまうのに嫉妬したから、
王様を見ると逃げていたのは王様が大好きすぎて挙動不審になり王様に好きなのがバレてしまうからだったのです。(「或る人」は自分からサプライズで告白したかったのでバレてしまうと困るのです。)
当然、妻や子供の話も嘘でした。街の端っこに買った家は貴族達が集まってみんなで遊ぶのに使うために買ったものでした。
「或る人」はもう王様に会えないと思い悲しくなりました。悲しみのあまり、呆然と毎日を過ごしました。その間、貴族達は「或る人」の名前を使って散々遊びまくりました。「或る人」は貴族達が自分の名前を使って嘘をついていたことを新国王になって初めて教えられましたが、もうそんなこと「或る人」にはどうでもよかったのです。
王様に会いたくてもお城を出れば国民に殺されかねないため、お城をでることも許されませんでした。
せめて手紙を、と王様に宛てて手紙を出しましたが自分の周りの貴族達に握りつぶされ、なんとかそこを通過しても今度は王様の警護隊にチェックされてしまい、王様に手紙は1通も届きませんでした。
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