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第17話
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「或る人」は地下牢で床にうずくまり、呆然と過ごしていました。
自分にはもう何もない。自分の手の中に愛する王様の手はない。もう2度と、あのするりとした美しい手を握りしめることも触れることもできない。抱きしめることも、愛を囁くことも、会うことすらできない。もう人生が終わったも同然だ
と。そう思い、絶望したのです。涙も枯れ果てて、もう目からは何も出てきませんでした。
しばらくして、階段を降りてくる足音が響いてきました。
あぁ、きっともう処刑の時間なのだろう。そんなこと、もうどうでもいい。だって俺はもう死んだようなものだから。
でも、もし、あの足音が王様だったら…
いやいやありえない。王様ははるか遠くにいるんだし、仮に王様であっても、俺を助けに来たんじゃなくて殺しに来たんだ。期待しちゃいけない。期待しちゃいけない…。
「或る人」はそう自分に言い聞かせました。しかし心のどこかでは、最後に彼に会えるなら彼に殺されたって構わない
と、確かに期待していました。
地下牢の錆びた鉄格子が音を立てて開けられました。
「或る人」が鉄格子の方を見上げると、そこには「或る人」が心の底から愛し、心の底から会いたいと願い続けた王様の姿がありました。
王様は鎧を脱ぎ捨てると、「或る人」に駆け寄りました。「或る人」は殺される恐怖と会えた喜びで動けませんでした。しかし、駆け寄った王様は「或る人」を殺しませんでした。
それどころか、「或る人」を力いっぱい抱きしめたのです。「或る人」は驚き、何をしているのかと尋ねました。すると王様は泣きながらこう答えました。
君にずっと会いたかった。君をずっと愛してる。迷惑だろうけど、私は君が大好きなんだ。君のことが好きで好きでたまらないんだ。1日も、一瞬も、君を忘れたことはない。そのくらい君を愛してる。言葉に言い表せないくらい、君を愛してるんだ。
この言葉には「或る人」だけでなく、その場にいた人達も驚きました。だって今まで王様は「或る人」を殺したいほど憎んでいると思っていましたから。
王様は唇を震わせながら「或る人」に尋ねました。
1度でいいから正直にはっきり君の口から聞きたいんだけど答えてくれないかな。嫌なら嫌だと言ってね、もし断られても君を殺したりは絶対しないから
あの、私とーーーーー
ちょっ、ちょっと待って!
王様がそこまで言ったとき、「或る人」は王様の話を遮りました。そしてこう続けました。
お願い、俺から言わせて。
王様、俺はあなたのことを愛してます。俺には妻も子どももいません。全部誰かがでっち上げた嘘です。でも、あなたを愛してることだけは嘘じゃない。俺はあなたをずっと愛してる。今までも、これからも。
だから、ね、王様、
どうか俺と付き合って、いや、
俺と結婚してください。お願いします。
王様は顔を耳まで赤くして、目から涙をぽろぽろこぼし、しゃくりあげながら言いました。
はっ、はい…、つつしんでお受けいたします。
王様の顔には笑みが溢れました。「或る人」が久しぶりに王様の笑顔を見て嬉しくなり、思わず王様を抱きしめると王様もそれに応えて「或る人」を強く抱きしめました。
そして、
「或る人」は、その場で王様に熱くて深〜いキスをしました。王様もそれに応え、しばらくの間2人だけの世界になりました。
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