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創消世界 1
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街を歩く主婦も
家電屋のテレビに映る芸能人も
はずれで集う若者たちも
壁に張り付いている蜘蛛も
中年のオジサンも
その人に引かれて歩く犬も
その犬に戯れる少女も
少年がひとたび瞬きをすれば泡のように消える。
すべてが真っ新に、というわけではなく
何かがひとつずつ、消えていくのである。
消えた者の記憶は空間から抹消されて、最初からなかったことになる。
少年がこの能力に気付いたのは6歳の時であった。
目の前で人が消えていく。
それでも人々は、消えた人のことを知らない───いや、そもそも存在しない概念だ。
少年は、人を消してしまう能力よりも、消されたそのまわりの人々を見るのが嫌なのだった。
その人の記憶はこの時空からまるごと消えるが、少年自身が、消えた何千の人々の記憶を忘れることはなかった。
少年は自分を責めたが、自殺しようと試みる度、少年の罪を知らないまわりの人々が彼を引き止めるのであった。
どうせ君たちも僕のせいで消えるのに。
人に対して不信感を抱くようになったその少年は、他人に干渉しなくなったし、そのおかげで消えた人やその周囲の人を見て心が痛むこともなくなっていった。
別に、消えてもいーや。
少年は次第に、罪の意識を持たなくなった。
少年は殺人をしたわけでもないし、消えた者は最初からいなかったのだから、少年が消したこともウソになる。
少年の視界に入った者は、自動的に次に消える対象者となり、複数いる場合はDISAPP(ディサップ)によって抽選にかけられ決められる。
DISAPPとは、この世界の創設者である。
この世界の者はDISAPPの駒であり、あたかも個々が別個に感情を持っているように見えているだけなのだ。
それでも人間は生きようとした
どうせ終わりが来るのに、終われば全て消えるのに。
無駄なんだよ。全部…
大人しく死を待てばいいんだ。
少年は馬鹿馬鹿しいと人間に心底呆れて、今日の夕飯を買いに外へ出た。
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