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少しずつ
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早く会いたい、と思ったものの善さんとは全く会えていなかった
バイトでは相変わらずで避けられてはいないけれど必要最低限の会話しか出来なかった
それにバイトはお金を貰っているため、私情を挟んでしまっては雇ってくれている人にもお客さんにも失礼にあたってしまう
そんなこんなであれからあの話は一度もしていない
「なーに、まだ仲直りしてないの?」
あの樹の下を二階の窓から見つめていると、後ろから潤が声を掛けてきた
その問いかけにまぁな、とだけ答えるとどんっとケツを蹴られる
「…っ、て」
なかなかの強さで蹴りやがった。
ジリジリと痛みが広がって、潤を見るとニヤリと片方の口の端だけを持ち上げていた
「そんなショボくれてると来るもんも来ねぇよ。
学校中探したの?」
「もう10回以上は回った」
そう。そんなに探し歩いたのに善さんを見つけることが出来なかった
何処にいるのかも想像がつかない
「じゃああと50回。
大丈夫だろ、爽太の体力アホみたいにあるしさ」
そう言われてはっ、とする
潤は昔からこういう奴だ。
追うものは決して逃がさないし、そのためなら自分のことを犠牲にしてでも、だ。
それが勉強でも、恋愛でも、友情でも
全てを手に入れる代わりにそれ相応の努力や時間を費やして…
自分の決意の甘さに溜息が溢れる
「ほら、早くしないと一色さん帰っちゃうんじゃない?…あの人を助けたいんなら常識は捨てないときっと、駄目だよ」
常識を捨てる
それがどんなに難しくて辛い事なのか
それが分かっていたから善さんと会いたいと思うはずなのに決意が固まらなかったんだ
「…ありがとう」
それだけを言い残して大学の廊下を走り抜けた
途中で誰かの怒鳴り声が聞こえたけれど、それでも足は止めなかった
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