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「…っはぁ、…はぁっ……」
乱れる息を整えずに校内を走り回っても辿り着けない
善さんがいる場所が何処か分からない
「…くそ…っ」
校舎内の全ての教室は見たし、行き交う人にも聞いたけれど誰も見かけていないと言う
そもそも今日学校をもしかしたら休んでいるかもしれないし、とまた弱音が溢れそうになる
「……っ、何処にいんだよ」
何処を見ても探している人は見つからない
そしてふと、思いついた場所が。
まさか…と思いながらも足を進める
「……やっぱ居ないよな」
辿り着いたのはあの樹がある緑で
ステンドグラスのように木漏れ日が影と光を作り出し
白い肌にその模様を映し出した光景は今でも鮮明に思い出す
それを思い返すように樹の下に足を運べばその日の事を頭の中でフィルムが勢いよく回るようだった
そして、何かに惹きつけられるように空を見ると不自然な大きい影があることに気がついた
よく目を凝らして見てみると、まるで樹の妖精のようにフワリと腰を下ろす人が
「は……何年振りだろ」
太い樹の幹に足をかけ、右手で木の枝を持ち体を上げる
そしてゆっくりと確実に樹を登っていくとそのぼやけた輪郭がハッキリと見えた
そして、それは樹の妖精ではもちろんなくて
あの日のように木漏れ日が白い肌に模様を作る
閉じられた瞼には薄く青い血管が透けて見えた
そこから伸びる黒く長い睫毛はあの日のままだ。
「善さん」
太い木の枝に座っていたその人は、呼びかけに閉じられた瞼をゆっくりと持ち上げた
「…っ、爽太く」
「やっと、会えた……」
久し振りに聞いたその声、
久し振りに向けられる自分への視線
なんだか、泣きそうだ
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