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監獄のカーニバル 1
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男は、女の胸にしゃぶりいた。
思い切り乳房付近の肉を噛み切り、咀嚼して飲み込む。
手に付いた血は動き回る都度に男の灰色のパーカーを赤黒く汚した
肉と血の混ざったものがそこら中飛び散っている
それらをひとつひとつ、大切に口に運ぶ
男は、貧乏だから人を殺して食っているのではなかった。
人が食べたい。それだけであった。
この女は、男が殺してから1時間経っていたため血は固まり、美味しくなかった。
「ぺっ…。」
どんなに血を取り出しても、こびり付いた錆びた匂いは消えなかった。
「最悪な味だ…」
男は苛立った。
肉が台無しだ。
人を食べる悦びが一気に脱力に変わった。
もうここにいる意味は無い。
死体は放置し、洗面所で血の汚れを取って、
着替えて、その家を出た。
そんなひどい食人鬼は、恋をしていた。
高校2年生くらいの少年だ。
去年の冬、少年はバス停のベンチで読書をしていた。
男は一目惚れというものをした。
凛と立った背筋
本のページをめくる一本一本の指
ことばを追う目玉
計算されたような綺麗な線を描く、組まれた2本の脚
全てが男を魅了した。
食べたい…
ゴクリと喉を鳴らした。
その次の日から男はバス停に通い、少年を見て空腹になった腹に、少年を食べられない苛立ちをぶつけるように他の人間の肉を詰め込んだ。
ある時、少年は男の存在に気付いた。
毎日、毎日バス停にいて自分のことを眺めている男を不審に思うのは当然のことである。
折れてしまいそうなヨロヨロとした身体。
白髪が少し混ざってところどころ頭皮が見えている。
住に困ってはいないのか、悪臭はしない。
少年は恐る恐る、男に話しかけた。
「えっと…何か…?」
少年は話しかけたその時、パーカーの汚れに気付き不穏な目をした。
「…」
ああ、美味しそうな肉が、こちらを見て、話している。
男は今すぐにでもその首筋に噛みついてしまいそうな気持ちだった。
「あの…」
「…………ない…」
「え?」
ブロロロロロ…
バスが来て、少年は慌てて「すみません、また今度!」と言ってバスに乗り込んだ。
食べたくない。
男は、人を殺すことを生まれて初めて躊躇った。
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