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あとは帰ってくるのを待つだけ。
いや、待っているわけじゃないけど。
威圧感がすごいからちょっと怖いし、いやヤクザだから怖くないわけがないんだけど。
出来るなら帰ってきてほしくないのが本音。
でもそんな甘くないのが現実だ、というのは分かっている。
だって俺は藤堂さんのペットという存在だから。
その証拠に、玄関の方から物音がして時計を見ると8時を少し回ったところ。
ガチャと音を立てて現れたのはやっぱりというか、当たり前だけど藤堂さんで。
今日もバッチリと高そうな黒のシャツと黒のスーツを着こなしていて、相変わらずの無表情で黒いオーラを放っている。
藤堂さんは誰が見ても明らかに怖い。けれど、数日一緒にいて慣れたのか怖いのは少しマシになった。
「お疲れさまです」
「あぁ。遅くなって悪かったな」
「いえ、お風呂…入りますか?」
疲れているだろうしまずはお風呂かな、と思って言ったんだけど。
「なんだ、誘っているのか」
「ち、違います!!」
断じて違う!というか、何故そうなる?!
藤堂さんは男で、俺も男。だから誘うなんてあるわけない。
まず俺はホモじゃない。恋愛対象はちゃんと女の子だ。童貞だけど。
「来い。風呂に入るぞ」と言われ仕方なくバスルームまで大人しくついていく。
ここ2、3日怒っていたから何かされるかと心配していたけど、熱湯や冷水を浴びせられることもなく、浴槽の湯に沈められることもなく、平和なバスタイムだった。
背中を流せ、と言われた時は緊張して凄いドキドキしたけど、機嫌を損なわせることはなかったからどうやら上手く出来たらしい。
そして、やってきた夜ご飯の時間。
こんなに緊張して憂鬱な夜ご飯は初めてだ。
いつも高級な物を食べていて俺とは世界が違うから口に合わないんじゃないか…と不安に押し潰されそうになりながら、温めたハンバーグと野菜を盛り付けたお皿をダイニングテーブルに置く。
それだけでも凄い緊張して、心臓が口から出そうだ。
目の前で食べている藤堂さんが気になって気になって。あまり進まない故に減らない食事。
何も気にせず呑気に食べていられるほど俺は図太くない。
それどころか真逆で、他人が気になって仕方ない。
他人は俺のことをどう思っているのか。
悪い風に思われているんじゃないか。
今だって、こんな庶民的な料理美味くもなんともない、と思われているんじゃないか。
お腹がすいていて仕方なく食べているんじゃないか、って不安で不安で。
「食べないのか?」
「いえ、食べます…っ」
そうは言ったものの緊張と不安で食欲なんて消え失せていて。
俺がやっと半分を食べた頃、カチャと音が聞こえ顔を上げると、藤堂さんはもう食べ終わっていた。
怒ってもいない笑ってもいない無表情からは何も読み取れない。
美味しいと思ってくれたのか、不味いけど仕方なく食したのか、それすらも分からない。
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