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蹴られて殴られて、痛くて苦しくてもがき吐く姿を父と母が指を指して笑う。
『ど……して、僕を、嫌いなの』
何度も、何度も繰り返される暴力の中、歌が聞こえた。
懐かしい歌声に、真っ暗い場所から外へと身体が引っ張られる。そっちもきっと痛くて苦しくて怖い。行きたくない。
『私は嫌わない』
誰か分からない。でもそれは嘘。僕は一人ぼっちでみんなに嫌われてる。
『ふふっ、まさか。逆よ。みんながあなたを愛してる』
嘘つき。
『お兄ちゃん二人も嘘つきかしら?』
お兄ちゃん、いない。
『いるわ。何があっても守ってくれる強くて優しいあなたのお兄ちゃんたち』
本当に。
『ええ、だから安心して起きていいのよ。愛してるわ。愛しい私の子、フィちゃん』
優しい声を目を覚ませば忘れていた。真っ暗い夢も何もかも。
「フィーリィー、良かった」
五日、眠っていたらしい。原因不明でいつ目を覚ますか分からなかったと、痩せた姿の兄二人が教えてくれた。
「ごめんなさい、もう……大丈夫」
王都の学園に行く兄二人。この家で一人で過ごすのに慣れないといけない。
「一人でも頑張るの」
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