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「へぇ~戸川、今日調子いいねぇ~」
同僚の町田徹。口癖は「へぇ~」という気の抜けた相槌。
同い年で同じ大学出身だが、話したことはなかった。でも会社に入って案外いい奴だとわかってきた今日この頃。
「まぁな、ちょっといいことあって」
「へぇ?どんな?」
まさか男に告白されたとはいえまい。
そしてなぜか舞い上がっている自分、恥ずかしい、余計言えない。
「もしかして結婚するんですか、戸川さん!」
「はっ?」
パッ、と登場と同時に周りが華やぐような雰囲気をかもしだす彼女は、総務課の柳谷さん。
今年入社したばかりの新人だが、気も使えるし愛想もいい、そしてなにより可愛いのだ。職場で彼女を嫌う人はいない。
そういう俺も入社したての頃は狙っていたが、すでに人妻だということを町田に知らされ、小さな恋心は儚く散った。
「…へぇ~結婚するの?」
「しないしない。彼女募集中」
「ええ、じゃあなんでそんなニヤけてるんですかぁ?今日の戸川さんの顔ヤバイですよ」
「え、やばい?そんなに俺ニヤけてた?」
「はい。時計見ながら」
自分でもそんなに浮かれているとは、恐ろしい。まぁでも男に告白されるのも悪くはなかった。
この頃は仕事づくめで変わったこともなかったし、日常に刺激ができたと思えばニヤけるのも仕方ないだろう。
柳谷さんに言われ時計を見ると、もうそろそろ定時だった。いつもは少しだけ残業するのだが、今はすぐにでもあの青年に会いたい。
紙を返したら、どんな反応をするだろう。
悲しむのか、諦めるのか。それはそれでつまらない気もするが。
「じゃあ俺そろそろ上がるわ」
「え?残業男の戸川が?」
「やっぱりデートか何かなんじゃ……」
「だから違うって!変な噂流すんじゃねぇぞ」
お疲れ様、と二人に告げて鞄を持ち職場を出る。
エレベーターに乗っている間、ふと自分の鼻歌に気づいて「あ、」と一人つぶやく。やばい、と柳谷さんに言われたことを思い出して恥ずかしくなった。
風見さん。いや、風見くんと呼べばいいのか。
なぜ俺なんかを好きになってくれたのか。
毎日やつれた顔でコンビニでショートケーキを買う、哀れなおっさんが珍しかったのか。
いや待てよ、俺はおっさんだ。
からかわれているという可能性になぜ気付かなかった。
あ、なんか落ち込んできた。
コンビニ行くのやめようかな。
「あ、こんにちは!」
「え?」
すぐ隣で聞こえた挨拶に振り向くと、そこには、なんと風見くんがいた。
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