アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
頑張れマオくん(4)
-
魔王城のお父さんの部屋についた。魔王をやめてからも、お父さんは同じ部屋で生活している。普段中で何をしてるのかはよくわからない。
「ここにユキくんが?」
043号は緊張した面持ちで聞いた。
「ああ」
「…ユキくん、俺のこと何か言ってた?」
「えっ?」
「怒らせちゃって、それっきりだったから」
ユキも怒ることがあるのか。駄々をこねたり不機嫌になることはよくあるけど、誰かに対して怒っているところはあまり見たことがなかった。
「特に何も」
「そうか…」
043号は気落ちした様子だ。いい気味だ。
ノックして扉を開けると、お父さんがこたつに入ってみかんを食べていた。
「ユキくんは?」
043号は部屋をきょろきょろと見回し、俺を睨んだ。
「お父さん、043号を連れてきました。俺はこれで…」
「ありがとう、マオ。いい子だね。お前も一緒にここにいてくれ」
「はい」
「…騙したな?」
043号からの視線を感じるが、無視を決め込んだ。
「おい魔王。ユキくんはどこだ」
すると今度は、043号はお父さんを見て尋ねた。
「お前の大好きなユキはここで魔王になった。記憶を抜いたから、お前のことは覚えてもないよ」
お父さんはみかんの筋を几帳面にむきながら答えた。
「そうか。じゃあ早く記憶を戻して人間界に帰してくれ。ユキくんは人間だ。こんなところにいるべきじゃない」
「魔王になったのは、ユキの意志だよ」
「ユキくんはまだ子どもだ。常に正しい判断ができるわけじゃない。だいたい、どうしてユキくんを魔王にしたんだ?ただの人間の男の子を…」
「お前をここに連れてくるためだ」
お父さんはにやりと笑った。
「ユキを返してほしいなら、お前がかわりに魔王になれ」
こいつが魔王に?
びっくりして043号を見ると、043号は意外と落ちついていた。
「その話は前に断ったはずだ」
「だからユキを連れてきたんじゃないか。これは人質だよ」
お父さんは懐から青く光る魂を取り出した。
「ユキの魂だ。お前が魔王になるなら、これをユキの体に戻して人間界へ帰してやる」
「…ならなかったら?」
「破壊する。ユキは人間に戻れなくなる。ついでにお前は悪魔の世界を出禁にする。お前らは離れ離れだ」
どうしてお父さんはこうまでして043号を魔王にしたいんだろう。ユキは043号を呼ぶための餌だった…ってことだよな。
043号はしばらく考えている様子だったが、ため息をついて答えた。
「…わかった。じゃあ俺が魔王に」
「ただし」
お父さんは急にこたつから立ち上がり、043号の口に人差し指を当てた。
「魔王になるためには、ユキの中から悪魔に関する記憶を消さなければならない。お前の存在はユキの人生から完全に消える。今後一切会うことはできない」
「結局ユキくんには会えないんじゃないか。俺にメリットがない」
「メリットなんてないさ。でもお前には魔王になるほか道はない。なぜなら…」
コンコン
小さくノックの音が響き、お父さんは言葉を止めた。
「マオ、開けてあげて」
「はい」
お父さんに言われて扉を開けると、ユキが立っていた。
「あれっ?マオくんこんなところにいたんだ。僕も元魔王さんに呼ばれて来たの」
「ユキ…」
「ユキくん!」
043号は大声で名前を呼び、ユキに近づいた。
「無事そうでよかったです。心配したんですよ」
「お、おじさん…だれ?」
ユキは怯えた様子で俺の後ろに隠れた。
「そういえば記憶がないんでしたね。俺はあくまさんです。ユキくんが小さい頃から願いを叶え続けて来た悪魔です。ほら、帰りましょう」
043号はユキに右手を差し出したが、ユキは首を振った。
「わ、わかんない。おじさん怖い…」
ユキは俺の手を引っ張りながら後ずさりした。
「ユキくん…」
043号の表情が一瞬曇ったが、すぐに満面の笑みに変わった。
「…かわいい!この警戒されてる感じ、新鮮ですごくいいです!悪魔になってもあなたは天使です。もっとお顔を見せてください!」
「ひっ!」
043号はユキの顔の高さまでしゃがみ、頬を撫でた。
「ああ…怖がってる顔もかわいいです。ふふふ…食べちゃいたい」
「マ、マオくん助けて!」
ユキに名前を呼ばれ、反射的にユキの前に立ちはだかり、043号と向かい合った。
「あっち行け変態野郎」
とりあえず思ったことを口にしてみたが、043号にはあまり響いていないらしく、にやにやした表情に変化は見られない。
「ユキくん、こっちでお友達ができたんですね。楽しんでいるみたいでなによりです。でももう、戻りましょう」
「戻るって、どこに…?」
「ユキくんの…いえ、俺たちの家です。死ぬまで一緒にいるって、約束したんですよ」
「わ、わかんないよぉ…」
「大丈夫。きっとすぐに思い出します。とにかくこっちに来てください」
043号はにっこり笑って腕を広げた。
「ぼ、僕……無理!!」
ユキくんはついに後ろを向き、走っていってしまった。
「ユキくん!…くっ」
追いかけようとする043号を、お父さんが止めた。お父さんが手を向けるだけで、全ての生物は動きを止められてしまうのだ。
「話は終わってない」
「でもユキくんが…」
「久しぶりに会ったからか知らないけど、さっきのお前ショタコン全開で相当気持ち悪かったぞ。マオ、ユキを連れ戻してきて」
「…はい」
043号とユキは、どんな関係だったんだろう。死ぬまで一緒にいる約束をしたとか、本当なんだろうか。悪魔と人間なのに…?
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
61 / 93