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6 続き☆GWの202号室②
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聞くべきか、聞かざるべきか……。
ヒロと一緒に暮らしていたのに、行きたい所も分からないなんて。まぁ、今までヒロは受験生だったし、土日は観光が主でイチャイチャが足りないというのも頷けるのだが、まさかゴールデンウイーク全て此処にいるのもまずいだろう。
仕方ない。これからのためにも、聞いた方がいい。気を取り直して再度チャレンジだ。
「晩にイチャイチャは取っておきたいから、少しでも出掛けようよ。何処か行きたいところはない?」
「……そうですね。行きたいというか。観たいのならあります」
「なに?」
「映画なんですけど。今公開中で一人で行こうと思ってたのを、一緒に行ってくれますか?」
映画……そうか。デートの定番中の定番だ。選択肢の中に今度から入れておこう。ヒロの好きなジャンルも知れて一石二鳥、これは乗るしかない。
「じゃあそれでいこう」
サッサと聞けば良かったな、映画は就職してから殆ど見ていない。レンタルDVDばかりだから久々に大迫力で楽しいだろう。
「直ぐ支度しますから! 洗濯ものお願いします」
返事を聞いたヒロは、”行く気スイッチ” が点灯したのか嬉しそうにして自室に駆け込んでいく。引っ越ししたものの多少の荷物は残っていて、此処に滞在しているときに使う物などが主に保管してある。
「上映時間と、席も調べてみます」
大学生らしい爽やかな恰好に着替えたヒロは、ダイニングテーブルの椅子に座ってスマホを操り始めた。
「ああ、宜しく」
残り一回の洗濯ものは量が少ないので、それほど待たずに干すところまででき、早速映画館へと出かけた。
映画の題名は ”おっさんのラブ” だそうだ。女子に大人気の映画らしい。
おっさんの恋愛!? なんか見てどこが面白いのだろう。他に上映している年齢差のある純情恋愛映画の方が楽しいんじゃないのかな、なんて思いながら上映時間まで待った。
ゴールデンウイーク真っただ中の映画館は混んでいて、ポップコーン一つ買うだけでも大行列でいささかゲンナリする。ヒロとのデートでなければとっくに引き上げているだろう。
上映時間が近づいてきて、シアターの入り口、チケット交換所で並んで待つ。列をなしているのは100パーセント女性である。なぜか周囲から冷たい視線を一心に浴び、この雰囲気に違和感を覚えるがヒロの方はというと全く気にしてないみたいで、先ほどから郷里のお姉さんとラインをしている。
「えーと。席は、此処かな?」
席番号を見ながら階段を上ると席はあった。が、そこは俗にいうカップルシートというものだった。
ヒロが先に座り、続けて座る。周りは女性客ばかりだから当然他のカップルシートは女子同士だ。気にしなければ全く大丈夫とはいえ、変な感じだ。
程なく上映が始まって場内は暗転し、その映画の内容に度肝を抜かれた。
18禁のおっさん同士のラブ!? の映画だ。それも内容はなかなかハードで、極道のおっさんが比較的可憐な!? ライバル派閥の極道のおっさんに運命的な出会いをして迫りまくり、様々な困難を乗り越え成就しそうな濡れ場になった時、横恋慕していた若いおっさん!? が乱入してきて修羅場になった、
強面の極道さんが大画面のなかで暴れまくって、それはもう息もつく暇もないバイオレンスなものだ。ラストでこの三人の裸体が絡み合うエロシーンに至っては口が開きっぱなしの驚きの連続で、呆気に取られエンドロールの流れる頃には放心状態になってしまっていた。
上映が終わり本気で胸を撫でおろす、チラ見した映画のキャッチコピーには『おっさんが織り成す史上最大の衝撃ラブの話題作』とあったが、その通りだった。特に激しいエロシーンは衝撃としか言いようがない。
「なんか、凄い過激な内容でしたね……」
映画館を出てもまだ動悸が収まらない。ハンバーガーショップへ立ち寄っていちごシェイクを飲みながらヒロはポツリと俺に言ってきた。
「ああ、まぁ。凄かったな……今晩はうなされるかも」
「そ、そんなに衝撃的でしたか? すみません。俺、好奇心だけであの映画観たかっただけなんですけど」
「いや、いいんだ。俺もいい勉強になったし」
今度から、ヒロと行く映画はしっかりあらすじを見ておこう、と決意する。今回は不覚にも内容もポスターも前評判に至るまで全く気にせず入ったからとんでもないことになった。下調べをしていればあの映画は家で観た方がまだ平和だと気が付いたはずだ。
「帰りましょうか……」
ヒロのその言葉に頷いて、夕飯の材料だけは買って帰路につく。
本日の夕飯は一足早めの冷やし中華だ。何故かこの地方は盛りつけた器の端にマヨネーズを乗せて出すところが多く、不思議で仕方ない。しかしヒロは流石地元だ、馴染んでいて美味そうに食べていた。
「さ、ご飯も食べたし。晩にイチャイチャするって言ってましたよね?」
食器を洗っていると目を輝かせながら俺の背後から抱き着いてきた。
「うん、男に二言はないよ、もうちょっと待って?」
「今日の映画、拘束プレイとか有りましたけど、興味ありますか?」
「え、いや。別に」
「おれ、あの映画みたいに縛って欲しいかも」
首筋に息を吹きかけられて肩をすくめた、全く。多分エロだけが見たくてあの映画に興味を持ったな? しかし生憎縛るのものなんか無いし。
「だーめ。変に目覚められても俺が困るし。それに荒縄なんか無いだろう?」
「それが実は。有るんです」
「……え、?」
「さっきの映画館で、売ってました」
リュックの中から、紙の包みを取り出して開けると、細い荒縄が姿を現す。
売ってた? あの映画館で? うそだろ?
「えっと、初心者用なんですよ。細いからお遊び程度だって」
「……お遊びでも、俺は使わないから」
「そんなぁ、折角買ったのに」
「あのね、そういうのはドМな人が使うんであって……」
決して一般人は使わないから、って言ってやろうと思ったのに
「ちぇ、じゃあ。知り合いにあげようかな……」
名残惜しそうに荒縄を見ている。いや待て、ヒロ。それは……人にあげるものでもない。
「っていうか。周りにドМな人居るの?」
「一人だけ、素質の有りそうな人が居ます」
「大学の友達?」
「いえ、違います」
大学の友達じゃない、素質の有りそうな知り合い?
一体、向こうで何をしてるんだ?
途端に心配になってきた。一人暮らしはいいが、変な交友関係者が増えてもらっては、こっちは気が気でない。
「ヒロ……君のこと、心配になってきたよ。怪しい人についていっちゃダメだからね?」
「そんなの当たり前じゃないですか。小学生でも分かってますよ、もう。ホントに俺のこと子供扱いして……そんなに頼りないですか?」
口を尖らせて拗ねている様は正しく子供っぽい。
そりゃ……心配に決まってる。大学生になり日に日に変わりつつある君はキラキラ輝いて眩しいのに。
「ふふ、でも。俺のこと心配? 繋ぎ止めてくれますか?」
前から抱きついて、上目遣いをして挑発的に誘ってくる。
「信じてるから、大丈夫だけど。でも心配だよ」
「ね。じゃあ。1日と2日も一緒に居てくれますね?」
「ああ、居るから……って。え、俺もそっちに行くの?」
「だって休みですよね?」
「そうだけど。ゆっくりのんびり体を休めようと思ってたのに」
「もう。あの映画のおじさんのがよっぽどパワフルですよね。見習った方がいいですよ」
「あれは映画であって、……」
現実と違うから。と言おうと思ったが、はたと考える。
まぁ、ハードな内容だったがあの主人公の極道さんも好きな人にかける情熱は感じられた。どんなことであっても行動力は真似るべきか。
「しょうがないな……ヒロがそう言うなら、一緒に行くよ。大学の中も入っていい?」
「はい。図書館もあるし、講義もそれほど無いから待ってて下さい」
心底嬉しそうに微笑まれ、ホントにこの子には敵わないな……とじんわりと思う。
今晩もイチャイチャしてヒロは脱力して眠っている。結局ずっとゴールデンウィークを過ごすのか。
ヒロにこうやって一緒に居たいと言ってくれる時間はあとどれくらい有るのだろう。
ジリジリと。季節よりも一足先に、身を焦がすこの気持ちは。いつになったら穏やかになるのかは自分でも分からない。
静かに更け行く夜。仰向けになり天井を見つめる。
(完)
落ちなかった……orz
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